第五章
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ことは言うまでもない。
「対空攻撃も強い」
「水雷攻撃は桁違いだ」
日本軍の酸素魚雷は一撃でイギリスの艦艇を吹き飛ばす程の威力だったのだ。
「ここまで強いとはな」
「完全に予想外だ」
「まさか極東の小国があそこまで強いとは」
「本当に予想外だ」
「正直侮っていたが」
「ここまで厄介だとはな」
彼等は項垂れて日本の強さを認めた。彼等は大西洋だけでなく太平洋でも苦戦し多くの損害を出してしまった。
戦後ソードフィッシュで太平洋で戦った老人が日本に訪れ記念館で零戦を見て苦い笑みを浮かべこんなことを言った。
「こんな強いとは思わなかったよ」
「?零戦がですか?」
「強かったんですか」
「うん、そうだよ」
共にいる若い日本人とイギリス人達に話す。
「私は若い頃太平洋で零戦に追いかけられてね」
「確かパイロットでしたよね」
「爆撃機のね」
こう若いイギリス人に話す。
「空母から出て戦ってたけれどね」
「そこで零戦と戦ったんですか」
「複葉機じゃどうにもならなかったよ」
「複葉機って。一次大戦の遺物だったんじゃ」
「イギリス海軍ではそれでいいと思っていたんだよ」
その通りだった。要するに艦載機のことをわかっていなかったのだ。
「それで戦ったけれどね」
「駄目だったんですか」
「二枚羽根が一枚羽根に勝つことは無理だよ」
これは航空機の常識である。
「だから零戦の日本軍には勝てなかったんだよ」
「そうだったんですか」
「私達は日本を侮っていてしかも艦載機についてわかっていなかった」
老人は若い日本人とイギリス人達に話した。
「戦争には勝ったかも知れないが戦場では完敗だったよ」
若い頃に乗っていたソードフィッシュを思い浮かべる。強いと思っていたそれは太平洋では通用しなかった、それと共に零戦を代表する日本海軍の強さも思い出した。
そのうえでこ若者達に言った。
「自分に奢るな、相手を侮るな」
「そういうことですか」
「結局のところは」
「うん、戦争でこの二つを犯すと命取りになる」
老人は零戦を見ながら言っていく。
「私にとってはそのことを知った戦いだったよ」
零戦は今は動かない、ただそこにあるだけだ。
だがそれでも老人はあの時の零戦とソードフィッシュを思い出していた、二種類の航空機がその二つの象徴だった。
ソードフィッシュ 完
2012・10・26
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