第66話『安心』
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た人でごった返しているのだ。
余りに一瞬の出来事で、まるで白昼夢でも見ているかのような気分である。しかし、背中には確かに痛みが残っていた。
道の真ん中に立ち尽くしていた一行は、とりあえず裏路地に逃げ込む。
「…どうなってんだ。人が消えたり現れたり・・・幻でも見せられてるのか?」
「それより部長! 結月が!」
「あぁ、わかってる。あの霧の中に誰か居たんだ。そいつが結月を連れ去った」
「だったら俺、探してきます!」
「無茶だ。この人混みじゃどうしようもできない」
「そんな……」
絶望に打ちひしがれ、悲壮な表情を浮かべる晴登に、終夜は掛ける言葉を見つけられない。
今や結月はずっと晴登の隣に居た。だからそれを失った今の晴登の心には、虚無感だけが渦巻いているのだ。
だが、そんな晴登にカズマは一喝した。
「しゃんとしやがれ! それでも男か?! 好きな女をそう簡単に諦めるのかよ?!」
「な、好きって……!」
「んなもん、見てりゃわかる。で、どうなんだ。諦めるのか?」
「そんなの──助けるに決まってます!」
「よし」
カズマは、険しい表情から一転して笑顔を見せると、晴登の頭を乱暴に撫でる。この時ようやく、晴登はカズマに安心できた。
結月は俺のせいで連れ去られたんだ。だったら、絶対に取り戻さなきゃいけない。
結月のいる日常が、俺の日常なんだ。
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