第66話『安心』
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り寝る・・・酒って恐ろしい。
「さてと、じゃあ今日はさっさと帰りますか」
「おや、もう帰んのかい兄ちゃん?」
「人数が多いからな。今度また一人で来るからよ。はいお代」
「まいど!」
元気な店主の声を背に、晴登達は居酒屋を出た。無論、結月は晴登の背中で熟睡している。
結局晴登は一口も酒を飲まなかった。
「早いけど、村に戻るか」
「別に気を遣わなくても・・・」
「嘘つけ。その娘が心配なんだろ? 慣れない所に連れて来て悪かったな」
そう言って、カズマは申し訳なさそうに笑う。そんな対応をされてしまうと、こちらも言葉を返しにくい。が、ひとまずはカズマの提案通り、村に戻ることにする。
「ところで、俺らは何処に泊まるんですか? 婆やの家じゃ狭いだろうし」
「無理やり呼び出したのはこっちだしな。そこら辺は任せとけ」
胸をドンと叩いて兄貴面のカズマ。しかし、そこに安心できる要素はやはり無い。
「何だよそのしけた面は。こう・・・もうちょい俺を頼ってだな──」
「ねぇ、ちょっと待って下さい。何か様子が変じゃないですか?」
ここで緋翼が一言。その言葉に、全員が辺りを見回す。異変にはすぐさま気づいた。
「人が・・・居ない?」
「店仕舞いにゃまだ早ぇ。どういうことだ…?」
カズマの反応を見るに、これは非常事態に相違ないだろう。今まで気づかなかったが、居酒屋に入る前とは打って変わって、人っ子一人見当たらないのだ。
さっきの居酒屋も、いつの間にか閉店している。
そして同時に、辺りが霧に包まれていくのを見た。
「嫌な予感がするな。全員、俺から離れるなよ」
人の声は愚か、虫の声や風の音すら聴こえない。霧のせいで周りの様子もわからない。この世界には自分達しか居ないのでは、と錯覚しそうになる。
一秒、また一秒と静寂が続いた。いや、体感では一分、一時間かもしれない。それだけ不気味な感覚だった。
「……三浦、後ろ!!」
「え・・・がっ!?」ドシャア
そして、まさに静寂を打ち破る一撃。晴登は突然の背後からの奇襲になす術なく吹っ飛ばされる。
「──はっ、結月?!」
衝撃は背後からだった。晴登は急いで背中を確認すると・・・そこに結月の姿は無い。
「何処だ、結月?!」
何度か名前を呼んでみるが、応答は無い。まして、この霧では上手く探すことができるはずもなかった。
晴登の頬に嫌な汗が流れる。
そして──霧は晴れていく。
*
晴登達は目の前の光景にただ唖然とするしかなかった。さっきまで誰も居なかった繁華街が、ま
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