第66話『安心』
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敵である。いくら魔術を使えるとはいえ、晴登たちが敵う相手なのだろうか。
「できるかどうかはアンタら次第さ。奴らは強い」
「…それが、俺らを召喚した理由ですね?」
「そうじゃ。儂らの手には余るんでな」
"この世界では手に余るから、別の世界に頼む"とは、これまた常識を逸した考えだ。しかし、そうでもしないと竜は復活し、この世界は破滅を迎えてしまう。この世界に縁は無いが、世界が滅ぶと聞いて良い気はしない。
「…とにかく、事情は掴めました。ただ、やはり俺らが参戦するのは理不尽というか・・・釈然としません」
「じゃろうな。そこは本当に申し訳ない。──ただ、アンタらと無関係とは言い切れない」
婆やは突如、声のトーンを落としてそう言った。
しかし、一体どこが無関係ではないのか。自分たちの世界と別の世界の話なのだから、普通に考えると干渉し合わないはずだが。
「もし、イグニスが復活した時の話じゃ。儂らだけでは奴と魔王軍を食い止めることが不可能に近いのは、先の話の通り。そして、なす術なく世界ごと滅ぼされるのは目に見えとる。だが問題は、滅ぼすモノを失ったイグニスがどうするのか」
「まさか・・・」
「そう。別の世界の破壊を企てるであろう。その時の標的となるのは、儂らの世界に近い世界──即ち、アンタらの世界だよ」
その衝撃の言葉に晴登たちは絶句する。これで、晴登たちとこの世界が無関係とは言えなくなった。その上、本気で取り組まないと後がないということにも。
「引き受けるかどうかはアンタら次第。儂らも全力を尽くすが、もしかしたら──」
「わかったわかった! 引き受けるよ!」
引き下がったのは終夜だった。妖艶な笑みを浮かべる婆やが少し腹立たしいが、だからどうなるって話だ。ここは大人しく引き受けるしかないだろう。
「よしよし、良い子たちだ。それじゃカズマ、繁華街を案内してやりな」
「良いけど…そりゃどうして?」
「もうじき戦になる。休息を与えておかねば、この子たちがやっていけまい」
「ガキ扱いするなっての。ありがたく戴きますけど」
終夜が婆やを鋭い目付きで睨む。どうやら、この二人の相性は悪いらしい。とりあえず今は、早々に退場した方が良いだろう。
「じゃ、じゃあ行こうぜ!」
晴登の考えと同じなのか、カズマはそう促す。一行はカズマに続いて、婆やの家を出た。
*
「なんか…ゴメンな?」
「カズマさんが謝ることじゃないですよ。これが…運命ってやつですかね」
「今どきの子ってそんな考えするの…?」
「んな訳無いでしょ」
カズマは感心しているようにも見える、驚愕の表情を浮かべると、
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