第三章
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「首相にも連絡がいったんだ」
「おい、チャーチルにもか」
「そこまで確かな話か」
「あのチャーチルが呆然となったらしい」
後に自伝で書かれたことだ、チャーチルがこの戦争で最も唖然となり唯一崩れ落ち涙を流した出来事だったのだ。あのチャーチルが、である。
「それだけ確かな話だぞ」
「間違いない事実だそうだ」
「日本には悪魔がいるのか」
誰かがこんな言葉を出した。
「戦艦を航空機が沈めたとはな」
「しかも大英帝国の戦艦をだからな」
世界を支配する大海軍の誇りがあった。イギリス海軍はこの時代も戦艦が主力でそれがまさに象徴だった。戦艦は戦艦にしか沈められないとさえ思っていた。
だからソードフィッシュがビスマルクを足止めしたことは大金星だったのだ、しかしそれがだったのである。
「日本軍は何なんだ?」
「そういえば真珠湾でも空を覆わんばかりの艦載機が来たらしいが」
ようやく真珠湾の話が見直された。
「それでアメリカ軍の戦艦を次々に沈めたらしいが」
「まさか強いのか?」
「ドイツ軍よりも」
「そんな筈がないだろ」
言葉の調子が変わっていた、これまでの余裕のある態度がだ。
今では狼狽しきり自分達の不安を消そうとするものになっていた、彼等は明らかに日本軍に得体の知れぬ恐ろしいものを感じていた。
そのうえで太平洋に入った、彼等は早速日本の機動部隊と戦うことになった。
艦長は沈痛な顔で出撃前のパイロット達を集めこう訓示した。
「昨日はオランダ海軍がやられた」
「そしてですね」
「連中の弔い合戦ですね」
「オランダ海軍は為す術もなくやられたらしい」
艦長はこう彼等に話す。
「どうやら本当に油断できない相手だ」
「だからですね」
「俺達もまた」
「護衛にシーファイアもつける」
空軍のスピットファイアをそのまま艦載機にしたものだ。その評判はお世辞にもいいものではない。
「万全を期していくぞ」
「わかりました、それじゃあ」
「行って来ます」
パイロット達も真剣な顔で敬礼して応え出撃した。ソードフィッシュ達は次々と空にあがり日本海軍の機動部隊に向かった。
上には護衛のシーファイア達がいる。彼等は無線で連絡を取り合っていた。
「もう少ししたら敵の機動部隊だな」
「ああ、昨日オランダ海軍を仕留めた奴等だ」
「その連中だよ」
「そうか。オランダ海軍は相当やられたらしいな」
「全滅したぜ」
すぐにこの話が出た。
「あっという間にな」
「本当に強いのか、相手は」
「みたいだな」
「アメリカも押されてるしな」
「フィリピンも蘭印も陥落したしな」
「当然マレーもシンガポールもな」
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