巻ノ百十六 明かされる陰謀その十
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「わかっておるな」
「はい、大助も真田家の者です」
「ならばじゃ」
「生きよと」
「途中で諦めさせるでない」
決してというのだ。
「よいな」
「はい、あれも少ししたら元服です」
「ならばな」
「何があろうとも」
「生きよと言え」
「生きてそしてですな」
「また戦えとな」
その様にというのだ。
「伝えるのじゃ」
「父上のお言葉として」
「わしだけでない」
「それがしからもですか」
「言うのじゃ、そして大助以外の子達はな」
次男や娘達はというと。
「まだ戦える歳でもない、おなごじゃな」
「ならば」
「片倉殿から文を貰っておる」
片倉小十郎、伊達家の宰相である彼からというのだ。
「密かにな」
「では」
「その時はな」
「子達をですか」
「引き取り育てて下さるとのこと」
「それでは」
「片倉殿は信じられる方じゃ」
その信義の篤さはというのだ。
「間違ってもお主の子達を粗末にはせぬ」
「それでは」
「他の子達はそちらに行かせよ」
片倉のところにというのだ。
「よいな」
「わかり申した」
「そうして憂いをなくしてじゃ」
「存分に戦い」
「万が一にもないが勝てればな」
「それでよしで」
「そして負ければな」
まずそうなると見ているその時はというのだ。
「よいな」
「はい、肥後からですな」
「薩摩に落ち延びよ」
「わかり申した」
「そしてじゃ」
昌幸は幸村にさらに言った。
「それからはな」
「はい、薩摩に落ち延びた後は」
十勇士、そして大助と共に秀吉を無事に薩摩まで落ち延びさせればというのだ。このことは幸村から話した。
「それからは」
「好きな様にせよ」
「我等が」
「天下一の武士を目指す者としてな」
「さすれば」
「それはわしはこの世で見ることはないが」
「あの世で」
幸村も応えた。
「そうして頂けますか」
「存分に見させてもらう」
「それでは」
「楽しみにしておるぞ」
「はい、戦に敗れてもです」
「生きていればな」
「天下一の武士を目指せます」
「ならばじゃ」
「必ずやその時は」
そのことを果たしたならばというのだ。
「是非共です」
「果たすのじゃ」
「そうさせて頂きます」
こう応えた幸村だった、そしてだった。
昌幸はこの話の後程なくしてだ、床から出られなくなった。それでその床から幸村に言うのだった。
「ではな」
「はい、間もなくですな」
「去る」
こう伝えるのだった。
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