第一話
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ね。酷いときは真っ青だもんね。」
「見せないようにはしてるんだけど…………やっぱり無理か。」
僕はそう言って軽く笑う。
「…………当たり前じゃない。これでも七年間位の付き合いなんだから。」
唯ちゃんはそう言って、笑わなかった。
僕は敢えてそれを無視して外を見る。
「外は暑い?」
今は七月の後半。今の僕が外に出たら暑さですぐダメになるだろう。
「うん、かなり。もう汗かいちゃって仕方無いよ。」
そのわりに唯からはいい匂いがしてる。制汗剤でも使ってきたのだろう。マメな奴だ。
「そうそう、これ。看護婦さんには見付からないようにね?」
唯ちゃんはそう言うと、持っていたカバンの中からポテチの袋を取り出す。唯ちゃんは日替わりで何らかのお菓子を持ってきてくれる。
「ありがと。どこに隠しとこうかな…………。」
僕はそう言いながら周りを見渡して、布団の中に入れた。
「ねぇねぇ、今日何か私に言うこと無い?」
唯ちゃんはそう言いながら、ベッドに両手を軽くおいた。
さてと、一体何だったかな。僕の誕生日…………ではないな。僕の誕生日は三月だ。それで、唯ちゃんの誕生日でもない。唯ちゃんの誕生日は六月だ。
…………あれ、学校の終業式って昨日だったよね。昨日その話をしたはずだ。
……日にち関係では無いのかな?
そうなると、今度は唯ちゃんを見てみる。何か、誉めて欲しいのかも知れない。
…………ダメだ。服装以外の変化が分からない。
「…………降参です。正解は?」
僕は観念して言った。
「もうっ、気付いてよ!ほら、髪の毛!八センチ切ったんだよ!」
「分かるかよ!」
いや、確かに昨日より短くなってるよ。それは認めよう。けどな?流石にそれに気付く男って気持ち悪いだろ。
「えー?でも大輝のお父さんは気付いてたよ?」
「ウチの父さんはノーカンだ。」
そんな、いつも通りの何気ない会話。僕が一日で、一番楽しみにしている時間。
僕が生きている間は、こうやって唯ちゃんと話せる。ある意味、その為に長生きしたいって頼んだのかもしれない。
でも、多分だけど、僕ももう長くないんだろうなって思う。多分、最後の夏なんだろうとは、前々から思ってた。
「…………海に、行きたいな。」
僕は何気無く、ボソッとそう言った。
「え、なに?海?」
「あぁ、うん。ほら、行ったこと無いからさ。ちょうど夏だし、行きたいなぁって。」
僕は本心からそう言った。父さんは毎日忙しくって、遠出とかはできなかった。映像で見たことは何回もあるけど、実際に見たことはない。
死ぬ前
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