勝負感
[3/3]
[8]前話 [9]前 最初 [1]後書き [2]次話
でどれだけ彼女が神経をすり減らしながら投げているかわかった。
「凛、あんたネクストでしょ?準備しなさい」
「あ、ありがと、真姫ちゃん」
抱き付いたまま固まっていた少女を引き剥がしバットケースの前に連れていく。
「凛、花陽は今すごい疲れてるわ。それはわかってるわよね?」
「うん。ごめん」
「別に抱き付いたのが悪い訳じゃないの。ただ、点差はたったの1点。しかも次の回はツバサとあんじゅよ。できるならここで1点取れれば、あの子はかなり楽に投げられるわ」
いつにもなく真剣な表情で真姫の話に耳を傾ける凛。彼女は投球練習を終えた相手投手を見てスイッチを入れる。
「あんたが出て私が返す。行けるわよね?」
「うん!!任せるニャ!!」
拳を合わせて気合いを入れる。凛はネクストに向かい、打席に立ったキャプテンを見つめる。
(穂乃果ちゃんが出たら凛が返す。真姫ちゃんが打ったら凛は絶対ホームに返ってみせるニャ)
指揮官の目から見ても集中力が上がっているのがわかる。その気持ちは打席に立つ穂乃果にも伝わっていた。
(凛ちゃんすごい気合い。よし!!穂乃果も絶対出るよ!!)
やる気満々でツバサを見据える。その初球、積極的に振りに行くスタイルの彼女がスイングすることができなかった。
「ストライク!!」
137km・・・あまりの速さにあんじゅもミットを弾かれボールを拾い、ユニフォームで拭ってから返球する。
(来るってわかってても、このスピードはやっぱり怖いわね)
女子野球世界最速のボールを間近で見れるのはありがたいが、これだけの速度ではケガをしてしまいそうで怖い。捕手に慣れている英玲奈でさえ取り損ねたストレートを、初体験のあんじゅが確実に捌くのは少々無茶な願いだ。
(それでも捕るわよ。来なさい)
ミットの芯を見せ構える。そこに寸分違わず132kmのストレートが投げ込まれる。
(スピード表示にばらつきがある。まだ力を制御しきれていないか?)
西村もその速度に立ち上がり戦況を見据える。力の送り方にムラがあるため球速差が生まれているが、それがかえって打者のタイミングをずらしている。
(最後はナックルをやってみましょう。たぶん打てないでしょ?)
(緩急ね。腕は思いきり振らないと)
ストレートとほぼ同じ腕の振りから放たれた100kmほどのナックル。穂乃果はこれに腰砕けになり、空振りの三振を喫してしまった。
[8]前話 [9]前 最初 [1]後書き [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ