第26話 陸軍長官の正妻と幼馴染の妾 Ev09
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て信頼できる人間だけなんだ。
遊撃艦隊のラスシャラ提督がそうだし、副長なんて置かないことが多い。
信頼されてるからこそ任されたんじゃないか」
「……能力は信頼されているかもしれませんね。
三笠の副長を命じられたときは嬉しかった。
想いは叶わぬとも、側にいて、役に立てるだけで……私は幸せでした」
「……伏見は時々大胆なことをしでかす割には、肝心なところで臆病だし奥手で駄目な奴だ」
「そんなことありません! お兄様を悪く言うのは止めて下さい!!
お兄様は士官学校の入学が決まり、私と別れるときに、
再び未曽有の大戦が起こるだろう。
その時に、日本と、多くの人々幸せを守れる力欲しい――って言ってました」
「私はお兄様の志に憧れて、惹かれて軍人になった。
お兄様は今も幼き日の志の通りに生きて行動してる。
それなのに私は今まで平良の家の力にも逆らえず……
ただの幼馴染に過ぎないのに、お側で思いあがって……
公私の分別に厳しい軍令部総長のお怒りをかった……当然のことです」
「福原提督、婚約者の私に遠慮せず、伏見に毅然として迫れ!
悩みを抱えたまま、第八艦隊と提督となる前に、伏見と同衾して本音を聞いてこい」
「……よろしいのですか?」
冷静さを欠いた福原が不機嫌な態度で訊ねる。
「その方が互いに幸せになれる」
「幸せ……山下長官も平良と同じで、
お国の為、陸軍の為に、婚約者として、正妻としての幸せなどいらないと?」
「それは違う……私は婚約者として充分に幸せだ……
ただ私一人では伏見を幸せにすることができないんだ」
「……どういうことですか?」
「今までお見合い誰もが私を結婚させて家庭入れることを望んでいた。
けど伏見だけが、伏見家や山下家の本家の意向を抑えてまで、
私が陸軍長官として、国の為、帝の為に働くことを許してくれた。認めてくれた。
伏見は私の生き方を何一つ縛ることをしないんだ。むしろ応援してくれる。
だから私も伏見の生き方を何一つだって縛りたくない」
「だから……他の女性との同衾を黙認していると?」
「それだけじゃない。同衾して初めて分かった。
伏見は繊細な奴なんだ。今のまま戦争が続けば、いつか壊れてしまう」
「……っ! それは……どういうことでしょうか?」
「以前に今村大将が言っていた。
伏見軍令部総長は切れ味鋭い抜き身の刀だと……
収まる鞘次第で名刀にも妖刀にもなるだろうと。
良い得て妙だと何とくなく思っていた。
けど何度か同衾してようやく分かったんだ。
名刀は鞘がないと自らの身も傷つける妖刀になると……
私一人では妖刀を鎮める鞘として不足なんだ……
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