第五章
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「私に聞いてもね」
「じゃあ」
「そう。どうしても気になるのならあの娘に聞いて」
本人にだというのだ。
「そうしてね」
「じゃあ」
話が急転した。聡はその日の放課後公園で白いコスモスを見ながらそのうえで正代にそのことを聞いた。聞かずにはいられなかった。
すると正代は俯いて目を伏せてこう聡に答えた。
「明日話そうと思ったけれど」
「じゃあ」
「御免なさい」
目を伏せたままの言葉だった。
「こうしてコスモスを見るのもね」
「何時までなの?」
「三日後に」
その時代にまた転校するというのだ。
「今度は厚木に行くの」
「厚木って」
「本当に明日話そうって思ったのよ」
「謝らなくていいよ。けれど」
「こうしてコスモスを見られるのもね」
あと三日、それだけだというのだ。
「三日ね」
「うん、それだけだから」
「そうよね。その三日の間だけれど」
「一緒にコスモス見よう」
聡は精一杯の強がりで正代に言った。
「そうしよう」
「そうね。三日の間ね」
「今もね」
聡は自分から言った。そしてだった。
二人でこの日も次の日もコスモスを見続けた。そうしてその日が来た。
駅前の公園で二人であのコスモスを見ている時に正代は横にいる聡に寂しい声でこう言った。
「私。厚木でも見るから」
「コスモス見るんだ」
「ええ、そうするから」
こう聡に言ったのである。
「コスモスが咲いてる限りね」
「僕もそうするよ」
二人はコスモスの前に立っている。そのうえでのやり取りだった。
「一人でもね」
「ええ、それじゃあ」
「さようなら」
聡からこの言葉を出した。
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