7. あなたの声が聞きたくて(後)
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たを真っ赤にして伏し目がちに、両手の人差し指をつんつんと突き合わせながら、口をとんがらせて答えたそうだ。
「えと……あの方、最近は毎日、ここに食べに来てくれるんですが……」
「ほう」
「私の……その……お味噌汁を、いつもー……そのー……」
「……?」
「とっても、その……美味しそうに、飲んでくれる……ので……」
「……」
「とても、気になって、眺めていたら……その、すごく美味しそうに、私のお料理、食べてくれる人だなーと……思いまして……」
そういって、真っ赤っかな顔でもじもじと話す鳳翔さんは、付き合いの長い自分ですら新鮮に感じたと、ロドニーさんは語る。
そらそうだ。あんなに落ち着いている鳳翔さんが、そんなに照れてもじもじしてるだなんて想像出来ん……恥ずかしいことこの上ないけど、見たかった……そんな鳳翔さん、見たかった……ッ!!
「……で、普賢院智久の味噌汁を飲むその顔が見たくて、ずっと見てたということか?」
「……!? ロドニーさんご存知なのですか? あの方のお名前をご存知なんですか!?」
「あ、ああ。ヤツは普賢院智久という」
「? ほげ……? とむ……?」
「ふげんいん、ともひさ。かつては剣で名を馳せた強者だそうだが、今は剣をやめ、音楽を嗜んでいるそうだ」
「へぇ〜……ふげんいん、ともひささん……」
「このロドニーの殺気を受け流し、決闘の約束を反故にし続ける、ずいぶんと腹立たしい男だよ……忌々しい……ッ」
「ともひささん……そっか……ともひささん……」
「鳳翔?」
「ふふ……」
「聞いてるか?」
その後、ロドニーさんは『お礼』と称してその日の晩ご飯を、厨房で食べさせてもらったそうだ。その日の献立はぶり大根。山のように準備されたぶり大根はとても美味しかったと、ロドニーさんはだらしなく開いた口からよだれを垂らしつつ答えてくれた。
………………
…………
……
「……というわけで、鳳翔はお前のことを憎からず思っている」
「……」
「だから、お前の演奏が聞けると分かった鳳翔は、必ず来る。それは私が保証する」
「……」
「だからお前は、気にせず準備を……ってどうした?」
……正直、今の話聞いて、恥ずかしくならないヤツなんて、いないと思う。僕は今、きっと顔が真っ赤っかだ。思考も停止してる。停止は言い過ぎにしても、きっと普段の2%ぐらいしか回ってないはずだ。
見られていた……鳳翔さんに、お味噌汁を飲む姿を、ずっと見られていただなんて……恥ずかしい……顔から火が出る勢いだ。
でも、決して悪い気はしない。かなり恥ずかしいシチュエーションではあるけれど、あの鳳翔さんが、僕のことをずっと気にし続けていた……その事実は、僕の心に、じんわりとした喜びを届けてくれた。
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