6. あなたの声が聞きたくて(前)
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「ひあッ!? ろ、ロドニーさんっ!? 練習中に何なんですかっ!?」
「たまにはここの掃除もさせていただこうかと思ってな。失礼するぞ」
そういい、窓ガラスの方に向かったロドニーさんは、モップをワゴンにたてかけ、手持ち用のワイパーとケミカルブルーの液体が入ったスプレーを手に取った。スプレーをこしゅこしゅと窓にふきつけ、器用にくいくいっと薬液をこそげとっていくその様子は、さすがプロのお掃除屋さんとも言うべき手際の良さだ。そのテキパキとした所作に、僕はつい見入ってしまう。
「……ぽー」
「……なんだ? 練習はしないのか?」
「いえ、やります。やりますけど……」
窓の縦一列をすべて拭き終わり、二列目に入ろうかというところで、ロドニーさんの手が止まる。また何か言われるのかと僕は身構え、『これからやるのです』アピールとして、チェロを構え、弓を一弦に当てた。
「……お前、さっきはどうした?」
「は、はいっ。さ、さっきとは?」
「その楽器……チェロと言ったか。それを抱きしめて、まるで憧れのバレー部の先輩への片思いが成就した女子中学生みたいに、もじもじくねくねしてたじゃないか」
み、見られていたッ!?
「正直、少しキモかったんだが……」
「ほ、鳳翔さんには言わないでくださいよ!?」
「? なぜここでお前の口から鳳翔の名前が出てくる?」
「い、いや、だって、やっと鳳翔さんと普通に話せるようになったのにッ」
「?」
「そ、それなのに『やだ普賢院さんってそんなキモい人だったんですか?』なんて言われたら……!!」
「?? ???」
ここで僕は、頭の上にたくさんのはてなマークを浮かべて、不思議そうに僕を見つめるロドニーさんに、この前やっと、普通に鳳翔さんと話が出来るようになったこと、鳳翔さんに『優しい』と褒められたこと、鳳翔さんに『チェロを聞いてみたい』と言われたことを、あわあわしながらまくしたてた。
その間ロドニーさんは、僕の話をジッと聞いていた。最初は困惑の表情を浮かべていたロドニーさんだったが、次第に表情が真剣になっていき……
「だ、だから! 今、嫌われたくなくて……」
「……」
「キモいだなんて思われたら……ッ!」
「……」
「だ、だからロドニーさん、絶対! 鳳翔さんには、言わないで……」
半べそで今のことを秘密にするよう懇願する僕に、左手の平をバッと向けて、僕の発言を静止した。
「……ッ!」
「へ?」
そして、左の手の平を僕に向けたまま、右手でポケットからスマホを取り出したロドニーさんは、真剣な表情でどこかに電話をしだした。画面が見えなかったから相手が誰かは分からなかったが、次のロドニーさんの一言で、誰が相手かはすぐに分かった。
「……赤城。鳳翔のスケジュ
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