5. あなたのもとに駆けつけたくて(後)
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しまい、ソラールさんやロドニーさん、赤城さんといった周囲の人たちから『何事だッ!?』と変な注目を浴びてしまった。
「な、なにするんですかっ!?」
「ぷぷぷ……」
鳳翔さんが立ち上がり、僕の前に回りこむ。両手で口を押さえ、ほっぺたを赤くしながら、楽しそうにぷぷぷと笑う鳳翔さんは、そのまま僕に背中を向け、ロドニーさんたちに向かって、優しく、でも弾んだ声を響かせた。
「みなさん! 剣術大会お疲れ様でした! お昼ごはんにしましょう!!」
「「「ウォォオオオオオオ!!!」」コワイカー!!!」
正直、僕に変な声を出させたのは納得行かないけれど……
「智久さんも、よかったらどうぞ!」
「……はいっ! いただきますっ!!」
「はい。首をつっつかせてくれたお礼です」
「えぁ……」
「ぷぷぷ……」
まぁいいか。いつも仕事してる時の鳳翔さんしか見てないから、今のこの、ちょっとおちゃめな鳳翔さんは、見ていてとても新鮮で、楽しいし。
その後、出場者全員と主審の赤城さん、そしてPT子鬼の天龍二世さんのみんなで食べた鳳翔さんのお重は、本当に美味しかった。玉子焼き……唐揚げ……ハムとチーズと大葉のちくわ巻き……トマトのピクルスは酸っぱくて最高に美味しい……
それはみんなも同じようで、いたるところから『こりゃうまいっ』『さすが鳳翔だっ!』『コワイカー!!』などと感嘆のため息がこぼれ、称賛の声が上がる。
だって、どれも実際美味しいもん。自分の胃袋に限界があるのがとても悩ましい。僕の身体に限界がなければ、いつまでもいつまでも食べていたい……そう思える、素敵なお重だった。食べてるうちに、顔中が笑顔になる……食べる人たちが、みんな笑顔になる……こんな素敵な料理が、世の中にはあったんだなぁ……。
「鳳翔さん! 美味しいです!!」
「ありがとうございます。頑張って作った甲斐がありました」
満面の笑顔でおにぎりを頬張り、梅干しの酸っぱさに顔をしかめながら、僕の隣で満面の笑顔を浮かべた鳳翔さんに美味しさを伝えた。正直、『美味しいです』だけでは伝えきれないこの感動……どうすれば過不足なく鳳翔さんに伝えられるか……ずっと考え続けていたのだが……。
「智久さん」
「はい?」
そんなふうに、僕が贅沢な葛藤に頭を悩ませていたら、鳳翔さんが、一つの水筒からコポコポと中身を注いだカップをくれた。途端に僕の鼻をこしょこしょとくすぐり始める、この鰹だしと田舎味噌の良い香りは、鳳翔さん作のお味噌汁。
「……よかったら、どうぞ」
「え……」
「この前晩ご飯をご一緒した時、私のお味噌汁を褒めてくださいましたから」
カップに注がれたお味噌汁の湯気の向こうで、鳳翔さんが笑顔で僕を見つめてた。ここは室内だか
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