5. あなたのもとに駆けつけたくて(後)
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を見回す。僕の周囲には、鳳翔と二世さん、そして妖精さんだけだ。
「あら、大きなたんこぶが出来てますよ?」
「は、はい……」
不意に、てっぺんのたんこぶに痛みが走った。鳳翔さんが、そのあたたかい右手で、僕のたんこぶに触れたようだ。とてもうれしいんだけど、今は触れてほしくない……でも、触れていてほしいような……
「いでぃっ!?」
「ぁあ、ごめんなさい」
妖精さんと子鬼さんを見ると、僕が先ほど脱ぎ捨てた小手を二人で手に取って、匂いを嗅いだ後目を回してコロンと音を立てて倒れていた。
上体を起こしたまま、前を見る。僕と鳳翔さんのはるか前の方で、ロドニーさんが大喜びでぴょんぴょん飛び跳ねていた。赤城さんの手を握り、『やったー! これで大学の強者全員から勝利をもぎ取ったぞ赤城!!』と、まるで五歳の少年のように、飛び跳ねて大喜びしている。
……さて、僕はどのようにして負けたのか……苦笑いの鳳翔さんに見守られながら、僕は必死に、記憶の残滓をたどっていった……
………………
…………
……
「はじめッ!!!」
覇気の篭った赤城さんの、ビリビリとした衝撃がこもる声がひびき、僕とロドニーさんの試合がはじまった。僕はロドニーさんから視線を外さない。
「フッ……」
「……」
「思ったとおりだ……やはり貴公は、いい気迫を持っている」
ロドニーさんの目だけが笑う。『私は楽しいぞ? 貴公はどうだ?』とでも言わんばかりの眼差しだ。大丈夫。楽しくはないが、自分でも驚くほど、ロドニーさんの気迫に気圧されない。意識の収束も問題ない。ソラールさんのお日様マークよりも、ロドニーさんの眼差しの方が、何倍も意識を収束させやすい。
「……」
「さぁ……戦の時間だッ……!」
ロドニーさんの気迫が、さらに高まったのを感じる。向かい風のように強烈なプレッシャーが僕を襲うが、僕の意識は驚くほど静かだ。今なら、ロドニーさんの一挙手一投足のすべてが、手に取るようにわかる。僕は彼女の隙を逃すまいと、意識をロドニーさんだけに向けた。
……はずだった。
ロドニーさんの背後に見える、扉がガラガラと開いた。途端に外の明るい光が、会場に差し込み、僕とロドニーさんを明るく照らす。でも大丈夫。この程度の逆光なら、問題はなかった。逆光だけなら。
「……ッ!?」
開いた扉の向こう側には、鳳翔さんが立っていた。いつもの和服に割烹着の出で立ちで、両手で大きなお重の包みを抱え、息を切らせ、ほっぺたが紅潮していた。開いた会場入口の扉の前で、僕とロドニーさんを、固唾を呑んで見守っていた。
「鳳翔さん……!!!」
その鳳翔さんは、今まで出会った誰よりも、キレイだった。
そして僕の意識がロドニーさん
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