左の捕手
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出してきた西村が審判からの言葉に固まる。ノーアウト一、三塁。ここを抑えられるのはツバサだけだと思うが、英玲奈がいなければ彼女の球を捕れるものはいない。
「ツバサ、すまんがキャッチャーに回ってくれ。あんじゅはピッチャーで――――」
「監督!!」
シートの変更を告げようとしたその時、次のマウンドに上げようとした少女が割って入ってくる。
「左用のキャッチャーミット、ありましたよね?」
その言葉を聞いた瞬間、西村の顔が強張った。彼だけではない。ツバサも、動けない英玲奈も、チーム全員の表情が明らかに替わった。
「あるにはある。が、それを使うのはここじゃない」
「そんなことないわ。むしろ今使わないでどこで使うの?」
目上の人物に話しかける口の聞き方ではないが今はそんなことを言っている場合じゃない。
「できるのか?お前に」
「やります。やらせてください」
その真剣な眼差しに何かを感じた西村は頭の中でしばし格闘すると、審判に向き直る。
「ファーストがキャッチャー、キャッチャーがライト、ライトがファーストに入ります」
攻守の要である英玲奈を下げるわけにはいかない。だからといって内野に残すと打球が行った時が怖い。ここは一度外野に置き、何かあれば呼べるようにしておこうと考えた。
『UTX学園、シートの変更をお知らせいたします。キャッチャーの統堂さんがライト、ライトの―――」
この交代にざわつく球場。英玲奈を心配する声ももちろんがあるが、それ以上に左の捕手が出てきたことに驚きを隠せない。
「あんじゅ。頼むぞ。何としてでもボールを捕れ」
「わかってるわ。任せて」
防具に身を包み定位置につく。2球ほど投球練習をさせてもらうと、マウンドに行き入念にサインの確認を行う。
「海未、スクイズできるか?」
「はい。私もお願いしようと思ってました」
ケガで満足にバットを振ることができない海未。それでも点数を取る方法は十分にある。事前に心の準備をさせたところで海未も心に余裕があるように見える。
(初球から行くか?いや、キャッチャーが変わってるからここは無難に外してくる気がするな)
久造キャッチャー相手に読み合いなどできるはずがない。ここは自分の勘を信じて初球を待たせる。
ビシュッ バシッ
「ストライク!!」
その予想を裏切り初球はストライク。セオリー通りではダメかと思ったその時、捕手の手からボールが突如放たれる。
「え?」
自分にボールが向かってきたにこは一瞬何が起きたのかわからず間抜けな声が出た。だが、それが自分を刺すための送球だと気付くと慌てて頭から戻る。
「アウト!!」
それでも、彼女の手がベースに届くよりも先に三塁手のタッチが勝っ
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