第六章
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「とにかく運動は苦手でして」
「わかったよ。それならね」
「それなら?」
「スポーツができないならできないでいいじゃないか」
バロアは微笑んでこうアンリエッタに述べた。
「もうそれでね」
「いいのですか」
「誰にだって出来ないことはあるよ」
「誰でもですか」
「得意不得意はどうしてもね」
あるというのだ。
「それは構わないんだよ」
「いいですか」
「というかね」
バロアはアンリエッタに笑顔で言う。
「君も人間だね」
「人間?」
「そう、その得意不得意だけれど」
彼が今言うのはこのことだった。
「それがあるからね」
「だからこそですか」
「うん、人間だね」
こうアンリエッタに言うのである。
「そう思うよ」
「得意不得意があるからですか」
「何も欠点がない人間なんていないしいたらそれは人間じゃないんだよ」
バロアは哲学的なことを口にした。尚フランスは自分達で欧州の哲学をリードしていると言っている、ただしこれには反論が多い。
「機械だよ、機械」
「では私も」
「確かに君は優秀だよ」
フランス外務省きっての才媛との評価は伊達ではない、切れ者として知られ各国でもその名は伝わっている。
だがそれでもだとだ、バロアは言うのだ。
「しkしそれはコンピューター、いやスーパーコンピューターで」
「人間ではなかったというのですね」
「今まで君はそうした評価だったんだよ」
スーパーコンピューターと思われていたというのだ。
「何処か人間離れした扱いだったんだよ」
「しかしそれがですか」
「うん、スポーツが苦手という欠点」
即ち人間味が知られてだというのだ。
「君もやはり人間だと思われたんだよ」
「欠点、実は私は」
アンリエッタは完璧なマナーで食べていく、そこからの話だった。
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