第五章
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「あれは何かあるな」
「少し様子を見ますか」
「そうしますか」
「そうしよう。まずはな」
とりあえずスポーツは続いた。ランニングでは相変わらず逆の意味で独走状態であり休日のスポーツでもだ。
テニスの時はこうだった。
まずはその白いテニスウェア姿が好評だった。
「脚奇麗だよな」
「白くてすらりとしてて」
「しかも長いし」
「ウエストも見事にくびれてるわね」
「髪の毛を後ろで縛った姿が素敵だよ」
「モデルでも通用するわね」
アンリエッタのテニスウェア姿は大好評だった。ラケットを持ったその姿はそのまま写真に通用する程だった。
だがテニスをしてみると全くだった。
動けない、左右の動きもラケットの振りも異様に遅い。殆どその場所に留まっているだけだ。
これにも誰もが驚く。そして見事な競泳水着姿でプールに出ても。
浮かべない、ぶくぶくと沈んでいく。馬にも自転車にも乗れなければテニス以外の競技でもボールに向かえない、これで皆気付いた。
「アンリエッタさんってまさか」
「あれかしら」
「どの運動もかなりあれだけど」
「ひょっとして?」
「運動は?」
もう明らかだった。それでバロアも昼食の時に一緒に食べながらこう問うた。
この日も外務省の食堂だがメニューが違う、メインは鶏肉をじっくりと焼き香草で味付けしたものでそれを食べながら自分の向かい側に座るアンリエッタに尋ねた。
「君はまさか」
「スポーツのことですか」
「得意しゃないのかな」
あえて飾らずに尋ねた。ここはそうするべきだと判断して。
「そうだね」
「はい、実は」
アンリエッタ自身も観念した顔で答えた。
「子供の頃からスポーツは」
「駄目だったんだね」
「何もできませんでした」
実際にそうだったというのだ。
「準備体操だけでもです」
「そういえばあの時も」
アンエリッタの運動の前と後のそれを思い出すとだった。
「固かったね」
「元々身体もかなり固いんです」
「そうだね」
前屈しても全く曲がらない、まるで起き抜けの様に。
「そういえばそうだったね」
「はい、実は」
「それに反射神経も持久力も」
具体的な運動能力もだった。
「どちらもだね」
「全く駄目でして」
「そうだったんだね」
「とにかく運動は苦手です」
それもかなり、だというのだ。
「他のことには自信があるのですが」
「成程ね」
「子供の頃から学生の頃はとにかく運動が駄目で」
それで損な評価になることも多い。学生時代は運動も見られるからだ。
「色々言われまして」
「劣等感があったのか」
「そうでした」
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