第二章
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「特に」
「ないか」
「ありません」
「ではスポーツは」
「スポーツですか」
「うん、何かするかな」
バロアは趣味として多くの者が楽しんでいるこのジャンルはどうかと問うた。
「色々とあるけれど」
「いえ、スポーツは」
本当によく聞きかなり鋭い者なら気付くことだったがそれはバロアにしても気付くことができないことだった。
「私は特に」
「興味はないんだね」
「はい」
その通りだと普段以上にクールに、装って答えたアンリエッタだった。
「私はそれは」
「何もしないんだね」
「しないです」
「君は完全に文科系か」
「そうなりますね」
「大体わかったよ」
バロアは静かに答えた。
「君の趣味はね」
「今日も仕事の帰りに本屋に寄るつもりです」
「そして本を買って」
「家で読みます」
「料理はどうしてるんだい?」
「自分で作っています」
優等生的な返答だった。
「健康の為にも」
「健康もだね」
「外で食べるとそれがどうしても崩れやすいので」
「そうだね。しかもお金もかかるし」
「浪費も好きではないので」
「いや、不景気な時には使わないと」
バリアはこのことは注意した。
「やっぱりね」
「それはそうですが」
「しかし浪費は嫌いか」
「将来何があるかわからないので」
アンンリエッタはここで真面目だった。
「ですから」
「真面目というかどうも」
「堅苦しいでしょうか」
「隙がなさ過ぎるよ」
難しい顔でこう言うバロアだった。アンリエッタのその顔立ちも見ての言葉だ。
「それがどうもね」
「ですか」
「うん、まあ清潔なことはいいことだし」
フランスの高級官僚もそうだがこうした世界はどうしても腐敗しやすい。権力というものが宿命的に抱えている問題と言えるだろうか。
「真面目もいいことだよ」
「では私はこのままで」
「ただ」
「ただ、とは」
「今度本当に考えてるんだ」
バロアはオムレツを口に入れながら話題を戻してきた。オムレツの黄色とケチャップの赤の対比が実にいい。
「スポーツ振興をね」
「スポーツですか」
「汗を流すのもいいものだよ」
バロアは笑って言う。
「私もこう見えても学生時代はサッカーをしていたよ」
「サッカーですか」
「絶対に無理だったけれどフランス代表になりたかったよ」
この夢のことも話す彼だった。
「勉強と一緒に励んだよ」
「そうだったのですか」
「君はそういうことは」
「別に」
普段の落ち着いた感じから暗い顔になる彼だった。
「興味がありませんので」
「運動は嫌いなのかな」
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