第5章:幽世と魔導師
第137話「手分け」
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その場に膝を付いた鵺を見て、このまま押し切れると二人は思う。
「油断せずに、畳みかけるよ!」
「うん……!」
再び霊力を編み、術式を構築する。
しかし、その瞬間………。
―――“痛かった”
「っ………!?」
悲しみが乗った、言霊のような呪いが飛んできた。
「く、ぅ…?」
「何、今、の…!?」
それは、心に突き刺さる精神攻撃。
鵺であって鵺ではない“何者か”の声に、那美と久遠は膝を付く。
あまりにも悲しく、あまりにも辛さを感じる声だったから。
「ダメ、これで、倒れたら…!」
「っ、那美…!」
精神攻撃だけでなく、爪による攻撃も迫る。
咄嗟に久遠が那美を突き飛ばすように動き、那美もその場から飛び退く。
間一髪、鵺の攻撃を躱した。
「一体、何が……」
「分からない……でも、とても悲しい…」
それは、かつて取り込んだ陰陽師の記憶。
かつて鵺は、一人の陰陽師の力を取り込んだ。
そして、取り込んだ陰陽師にとって“死をもたらした妖”となり、その記憶によって自らを強くしていた。
―――“届かなかった”
「っ、ぁ……!?」
その悲しき“記憶”からの攻撃に、那美は動けなかった。
その“記憶”からの声があまりにも辛く、哀しいものだったから。
既に、那美は鵺のソレに呑み込まれそうになっていた。
「っ、させ、ない…!」
久遠が必死に那美を守りつつ、応戦する。
しかし、久遠もまた“記憶”の声に呑み込まれかけていた。
「(あれ……この声、どこかで…確か……)」
声に呑み込まれ、徐々に意識を失っていく那美。
そんな那美に、一つの声が響く。
『那美、聞こえるかしら?……那美?』
「……ぇ…」
それは、一人の年下の知り合い。鈴の声だった。
伝心によって、連絡を取ろうと鈴から繋げてきたのだ。
そして、伝心は相手の精神状態を軽く感じ取る事もできる。
『那美!?どうしたの!?まさか……!』
「鈴……ちゃん……?」
『っ……間に合え、転移……!』
「(……そうだ、どこか聞いた事のある“声”だと思ったら…)」
「那美……!」
久遠が横へと吹き飛ばされ、那美に爪が振り下ろされる。
あわや切り裂かれるかと思った瞬間……。
―――リィン…
ギィイン!!
「っ、間一髪…!」
鈴の音が聞こえると同時に、振り下ろされた爪を一振りの刀が防ぐ。
そこには、つい先ほどまで伝心で会話していた鈴の姿があった。
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