俺たちのように
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のストレート。釣り球のつもりで投げたのだろうが、ここはバントするには十分手が届く。
コッ
うまく転がした打球。勢いも殺して一塁ライン際へと転がる。
(やられた!!いや!!これは・・・)
完全に決まったかに思えたスクイズ。だが打球の勢いが死にすぎていた。キャッチャーの穂乃果が飛び出して拾える距離。それをすぐに判断するとボールに素早く回り込みホームへ戻る。タッチに飛び込む穂乃果。それを掻い潜るように滑り込むあんじゅ。交錯した二者。彼女たちはどちらが速かったのかわからず審判を見上げる。
「アウト!!アウト!!アウト!!」
拳を高く掲げ高らかにコールする。その判定にあんじゅは地面を叩き穂乃果は大きくガッツポーズする。
『高坂素晴らしい反応を見せました!!あわや失点のピンチを素早い判断とケガを恐れぬ果敢なブロックで見事防いだぁ!!』
完全に決まったかに思えたスクイズをなんとか凌いだことで球場中が沸き上がる。
(これで1アウト一塁。打順は下位に向かっていくから、次で送ってその次で勝負はない。一番の理想はゲッツー。最低でもランナーを進塁させないでアウトカウントを増やしたいから・・・)
すっかり捕手としての状況分析能力が身に付いた穂乃果はタイミングをずらすべくまずはナックルを要求する。甘くてもいいからストライクへと攻めると、打者の加藤は泳いだスイングでゴロを打ってしまい、ショートへの平凡なゴロになる。
「絵里ちゃんこっち!!」
「凛!!」
捕球してすぐさまベースカバーに入った凛へトスをする。胸元へと上げられたボールを捕球し、すぐさま握り変え一塁のことりに送球する。
柔軟に自信のあることりは地面に付くほどに足を広げると、凛からのストライク送球を楽々キャッチした。
「アウト!!」
ゲッツーでこの試合最大のピンチを切り抜けたμ's。これに三塁側スタンドは盛大な拍手を送り、一塁側スタンドからは大きなタメ息が漏れていた。
『全国女子高校野球選手権大会決勝戦!!今までにない白熱した試合が続いております!!7回の表を終わりいまだ0対0!!果たして先に先取点を奪うのはどっちなんだぁ!!』
実況席も素晴らしい好ゲームに大盛り上がり。このまま延長戦、それどころか引き分け再試合すら考えられる熱戦となった決勝戦。しかし、それゆえにわずかなミスが試合を大きく分けることになることを、球場にいる誰もわかっていなかった。
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