4. あなたのもとに駆けつけたくて(前)
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が……
「さて。そろそろ時間ですね」
「そうですね」
赤城さんの言葉に、ほんの少し、真剣味が込められた。
稽古場には、すでにロドニーさんが立っている。黒の上下のスーツに身を包んだその姿は、以前にどこかで目にしたことがある、海軍の制服そっくりだ。色だけは、白い海軍の制服とは正反対の真っ黒だけど。持っているのは、ソラールさんと違って竹刀一本。さすがに真剣ではなかった。
ロドニーさんから遠く離れているはずの、僕の周囲の空気が、ピリピリと痛くなってきた。心持ち、ロドニーさんの背がいつもより高く見える気がする。あの人、あんなに背が高かったっけ……?
「普賢院さん。結果はどうあれ、ご武運を」
「ありがとうございます」
赤城さんが稽古場に上がり、続いて僕も稽古場に上がる。すでに立ち位置についているロドニーさんは目を閉じ、静かに佇んでいた。
「……」
言葉を交わさなくてもわかるし、いかに僕が弱くても、この気迫は伝わってくる。ロドニーさんの気迫は、さっきのソラールさん以上のものだ。
「……貴公」
「はい」
僕が立ち位置に着いた途端、ロドニーさんは静かに、スッと目を開いた。その鋭い目は一切の曇りなく、まっすぐ、正確に僕の目に突き刺さってくる。これはいつもの、清掃員のロドニーさんではない。艦娘でネルソン級戦艦二番艦。世界で最強の7人の一人。ビッグセブンの一角、ロドニーだ。
「良き敵であることを期待する」
ロドニーさんが竹刀の切っ先を僕に向けた。竹刀のその向こう側にある、ロドニーさんの眼差し。それが僕に叩きつけるこの気迫は、きっと気迫ではなく、殺気というものだろう。それが、僕の全身にまとわりついてきていることを、僕は感じた。
「……精一杯、努力します」
僕も竹刀を構える。
――ありがとう智久さん! ありがとう!!
そう言って、笑顔で僕の手を握ってくれた鳳翔さんに報いるためにも……勝てないまでも、せめて一矢は報いてみせる。
「……構え」
赤城さんの、静かな言葉が響いた。僕とロドニーさんは互いに竹刀を相手に向ける。ロドニーさんの眼差しが、僕の目をジッと見据えた。
「はじめッ!!!」
覇気の篭った赤城さんの、ビリビリとした衝撃がこもる声がひびき、僕とロドニーさんの試合がはじまっ……
………………
…………
……
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