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チェロとお味噌汁と剣のための三重奏曲
4. あなたのもとに駆けつけたくて(前)
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「は、はいっ」

 あまりにあっけなさ過ぎて、ついポカンとしてしまった。でも呆気にとられていたのは僕だけだったようで、赤城さんは僕達に礼を促し、ソラールさんは相変わらずYの字ポーズで気持ちよさそうに伸びている。

「ちなみにこのポーズの名は太陽賛美だ」
「いや、聞いてないです……」

 ぼくも、頭に大きなはてなマークを浮かべながら、頭を下げた。ともあれ、僕は一回戦は突破出来たか……よかった。これで命の危機は去ったはずだ……。

「……貴公」
「はい?」

 さっきまで太陽賛美のポーズを取り続けていたソラールさんが、チャリチャリとチェインメイルの音を響かせ、僕に歩み寄ってくる。なぜか一度前転し、背中からどすんっと着地して立ち上がってから、僕の左肩にぽんっと手を置いてくれた。右手の感触がずっしりと重く、ソラールさんが相当な強者であることが、その右手から伝わってくる……。

「貴公、いい気迫だった」
「はぁ。ありがとうございます」
「そのまま精進を続けるんだ。そうすればいつの日かきっと、太陽の戦士になれるっ」
「はぁ……」

 いや、すみません……正直、太陽の戦士ってよく分かんないんですけれど……もし、その太陽の戦士ってのになったら、ソラールさんみたいに、お日様イラストを全身に散りばめなきゃいけないんですかね……

 なんて困惑していたら、ソラールさんの背後に、黒のスーツにボタンダウンという中々フォーマルな格好をした男の人が突然現れ、ソラールさんをガシッと羽交い締めしだした。『こらカシワギッ! 何をするッ!?』とソラールさんが抗議しているところを見ると、この男の人はソラールさんの職場の仲間なのかな? 当然だろうけど、あのお日様のイラストは身につけてないみたい。

「また太陽の戦士とか言って、手当たりしだいに勧誘するのはやめて下さいって……!!」
「バカなッ!? 貴公も新しい仲間が出来るのはうれしいだろう!? それが彼のように頼もしい男であるのなら、なおさら……ぐおおおッ!?」
「うちはパソコン教室でしょうがッ!」

 そんな言い合いをしながら、ソラールさんは後輩の人に、背後から羽交い締めされたままズルズルと引きずられ、会場から離れていった。でも離れていくその最中。

「普賢院智久ッ!」
「は、はいっ!」
「決勝では貴公の健闘を期待する!! 貴公に、炎の導きのあらんことを!!!」

 と、ソラールさんは力強い言葉で僕を激励してくれた。正直、言ってることの9割近くは理解出来ないヘンタイお日様戦士のソラールさんだけど、根はいい人みたいだ。

「こちらこそ! ありがとうございました!!」

 僕も、剣を交えてくれたソラールさんへのお礼を忘れない。ソラールさんか……今回は敵同士だったけど、素敵な人と
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