人狩りの夜 1
[4/6]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
やろうという意見には賛成だ」
普段は君子ぶっている秋芳ではあるが、その性質は君子にも長者にも程遠い、荒っぽい性である。
『三国志演義』なら劉備よりも張飛、『水滸伝』なら宋公よりも武松や魯智深、『三侠五義』なら包拯よりも艾虎といった登場人物に近いタイプの人間だ。
貪官汚吏の類をこらしめるのは大好きだ。
ふんぞり返った金持ちや、権威を笠に着た連中を虚仮にするのは楽しい。
そのような男である。
「それで、調べはついているのか」
「城壁内のほとんどは森林が占め、北側は川と山に囲まれた地形で、森を抜けると湿地帯が広がっているわ。この人工の荒野で逃げ場といえば正門の他には城壁にある通用口のみね」
「良くできた箱庭だな、秘密の狩りをするにはもってこいだ。だが俺の訊いた『調べはついているのか』とは、クェイド侯爵が実際に非道な行いをしているか否かの――」
一発の銃声が響いた。
夜のしじまを破る音に驚いたのだろう、遠くから眠りを妨げられた鳥逹の羽ばたく音が聞こえる。
「……」
「……」
秋芳とペルルノワールは銃声のしたほうへ向かって駆けた。
三〇メトラ先にある厚い木板を簡単に撃ち抜く威力の弾丸は、光の六角形模様が並ぶ魔力障壁。【フォース・シールド】によって完全に防がれた。
垂直二銃身拳銃は弾込めしなくても、もう一発続けて撃てる。
だが連射はためらわれた。相手に命中させる自信がなかったからだ。
銃など、一流の魔術師にとってはなんの脅威にもならない玩具に過ぎない。銃を持った兵など何人群れようが物の数ではない。
などと言われるが、これはいささか誇張が過ぎる。
剣を抜いて斬りかかってくるよりも、銃の引き金を引くほうが早い。
たとえ一節に短縮したとしても、呪文を詠唱するよりも銃の引き金をひくほうが早い。
まして不意打ちで撃たれたらおしまいである。魔術師は肉体的には普通の人とおなじなのだから、銃に限らず飛び道具はじゅうぶんに脅威である。
そのため無意識にシールドを張る。たとえば条件起動式で一定以上の速度で飛来する物体に対して発動する【フォース・シールド】などが、銃撃に対するもっともポピュラーな防御手段として普及していた。
いまもこの方法で防いだのだ。
「やったな。お返しだよ、ボルカン人」
狩人の持ったクロスボウから放たれた鉄球をかろうじて躱した褐色の肌をした男は茂みの中に身を潜めた。
ボルカン人を追うふたりの狩人は馬に乗っている。木々の生い茂る場所に逃げれば追ってはこられまいと判断したからだ。
「さぁ、次はイーグル卿の番ですぞ」
「どうれ、まずは邪魔な草木を刈り取ってやりますか……《荒れよ風神・千の刃を振るいて・烈しく
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ