巻ノ百十六 明かされる陰謀その三
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「何を書いているのかそれがしにはです」
「そこまではわからぬか」
「どうにも」
「そうか、しかしまずはな」
「文字を炙り出しますか」
「そうしようぞ」
こう言ってだ、そして実際にだった。
家康は掛け軸の文字を炙らせて出させた、しかしその文字を見て彼も首を傾げさせてこう言った。
「うむ、これは」
「大御所様もですか」
「見たことがない文字じゃ」
「一体何でしょうか」
「日本の平仮名でも片仮名でもなくな」
そしてというのだ。
「漢字でもない」
「かといって南蛮の文字でもない」
「何じゃこの文字は」
言いつつまた首を傾げさせた。
「一体」
「少し学者に見てもらいますか」
「そうするか、念の為南蛮に通じておる学者にも見せてな」
「南蛮の学者は」
「一人おる」
家康は服部に確かな声で答えた。
「三浦按針が連れて来た者の中にな」
「ではその御仁にも見せて」
「うむ、見てもらおう」
「それでは」
こうしてだった、早速だった。
家康はその不思議な、南蛮の文字とも知らぬ文字を様々な学者に見せたが日本の学者は誰も知らなかったが。
按針が連れたその学者は目を瞠ってこう家康に言った。
「これはまさか」
「心当たりがあるか」
「はい、ルーン文字です」
「ルーン文字?」
「その文字です」
ややたどたどしい日本語で言うのだった。
「まさかここでも見るとは」
「何じゃそのルーン文字とは」
「はい、こちらにある文字で」
「あのアルファベットの他にもか」
「古来我が欧州で昔から使われていた文字で」
「そうなのか」
「その北の方で」
そうした文字だというのだ。
「魔術が込められています」
「魔術がか」
「はい」
その通りだというのだ。
「そしてもう欧州でも読める者は僅かの」
「そうした文字か」
「それがしは読めます」
学者は家康に言った。
「この文章が何と書いてあるのか」
「では何と書いてある」
「全ては佐渡奉行所の蔵の中に地下をもうけ」
「そこにか」
「隠してある、安心せよと」
その様にというのだ。
「書いてあります」
「そうか、そして半蔵が伴天連の者達は妖しい術を使ったというが」
「それは魔術や錬金術かと」
「魔術か」
「はい、こちらの妖術と言うべきもので」
それでというのだ。
「ルーン文字にもです」
「その力が入っていてか」
「はい」
そうしてというのだ。
「その力もです」
「使っておったか」
「おそらくは」
「ううむ、南蛮も謎が多いのう」
「はい、そのことはさらに」
「機をあらためて聞く」
家康はその学者に述べた。
「是非な」
「それでは」
「してじゃ、佐渡に文を送れ」
そのルーン文字に書いてあった
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