巻ノ百十六 明かされる陰謀その二
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「誰も死んでいなくて何よりだ」
「怪しい者達でしたが」
「この通りです」
「一人も欠けておりません」
「傷一つ負っていませぬ」
「何よりだ、拙者もこの通りだ」
服部は立って彼等に答えた。
「五体満足だ」
「まずは何よりですな」
「こうして全員残っていること」
「そのことは」
「そして何よりにだ」
さらにと言うのだった。
「動かぬ証拠を手に入れた」
「大久保殿と南蛮のつながり」
「それのですか」
「動かぬ証拠を」
「全て手に入れた」
その掛け軸を彼等に見せて話す。
「これだ」
「それですか」
「そこにですな」
「一見すると只の掛け軸ですが」
「それは違う」
「そうなのですな」
「誰にもわからぬ」
それこそと言う服部だった。
「滅多にな、しかしわかるな」
「はい、我等ならば」
「そこに何があるかわかります」
「まさにはっきりと」
「これ以上はないまでに」
「忍でも並の者はわからぬ」
到底というのだ。
「しかしな」
「はい、わかります」
「我等には」
「その掛け軸に謎がある」
「間違いなく」
「だから拙者も手に入れた」
何かあるとわかったからだ、素早く取ったのだ。
「ではな」
「はい、手に入れたのなら」
「もうここは去り」
「そうしてですね」
「駿府に戻るぞ」
「はっ」
十二神将達は皆応えてだった、そしてだった。
服部も彼等もだ、即座に甲斐の山中から姿を消して駿府に風の様に向かった。そのうえですぐに駿府に着いてだった。
服部は家康にその掛け軸を差し出した、すると家康はその掛け軸を手に取ってからこう言った。
「ここにじゃな」
「はい、大久保殿と伴天連の者達のつながりの証拠があります」
「そうか、しかしのう」
家康はその掛け軸をまじまじと見つつ服部に話した。
「見たところな」
「その掛け軸はですな」
「唯の掛け軸じゃ」
そうとしか見えないというのだ。
「どうもな」
「はい、しかしです」
「違うな」
「左様です」
そうだというのだ。
「これが」
「ではどういったことじゃ」
家康は目を光らせて半蔵を見て問うた。
「この掛け軸の秘密は」
「炙ってみて下され」
「炙る、か」
「それがし達には見えました」
「隠されて書かれておる文字がか」
「はい、そしてその字はです」
服部は家康にさらに話した。
「炙ればです」
「出て来てか」
「そこに手掛かりがあります、ただ」
「その手掛かりがか」
「何かを書いているのですが」
それでもというのだ。
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