2. あなたとご飯が食べたくて
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僕の名前は普賢院智久。読みは字のまま『ふげんいんともひさ』。かなり大げさで仰々しい名字だけど、別に名家の出というわけではない。名前負けもいいところだ。
趣味は音楽。特に大学に入ってから始めたチェロがとても楽しい。といってもオケ部はないので、軽音楽部の練習室を時々借りて、一人でチェロを練習する日が毎日だ。時々ジャズ研や軽音部から『ベースとしてうちに来ないか?』と勧誘されるときもあるけれど……それよりはクラシックをやりたいんだよねぇ。そのうち近所のアマオケに参加しようかと今企んでるところだ。
それ以外の特技は剣道。だけどこっちは、中学時代に親に強引にやらされてただけで、別に強くもなければ好きというわけでもない。ただ、竹刀をもたせれば、素人よりは様になる……その程度のことだ。
今は大学三年生。一年時と二年時にかなりガッツリと単位を取得したため、今年からはかなり時間に余裕が出来ている。
今日も僕の講義は三限だけ。その講義もたった今終わり、『じゃあ夕飯まで練習するか』と思い立ち、僕はいつもの練習室へと足を運ぶが……
「おっ! いたなッ!!」
練習室入り口前に、最近知り合った清掃員の女性が、モップを片手に仁王立ちしていた。傍らには、清掃道具を所狭しと並べたキャスター。水色のバケツにかけられた雑巾の黄色が眩しい。スプレーの中のケミカルブルーな液体が泡立っているのが見える。やや白っぽく見えるキレイな金髪は、一見ショートカットのようにも見えるけど、実は後ろでシニヨンにゆったり編み込んでいるらしい。そんな、美人と形容できる彼女は、今日も薄水色のツナギのような清掃服に身を包んでいる。
「ぁあロドニーさん、こんにちは」
「貴公を探したぞ普賢院智久!!」
「その、僕を呼ぶ時フルネームを叫ぶの、やめてもらっていいですか?」
「それよりも、私と勝負する気になったか!?」
「だから決闘なんてやりませんって……」
この人……ロドニーさんは、イギリスの元艦娘さんだそうだ。どうも漫画でありがちな『戦うことが大好きな人』らしく、僕が剣道をやっていたということを話したその日から、僕を見るたびに『私と斬り結べ』と物騒この上ないことを言ってくる。なんでも……
――強き者であれば挑まずにはいられない……
それがネルソン級の生き方だっ
らしく、どうも僕のことを凄腕の達人か何かだと勘違いをしているらしい。戦争が終わった今は、仲間内で清掃会社を立ち上げたそうな。その清掃会社とうちの大学が契約を結び、今はこうして、大学構内の清掃のため、ロドニーさんは、毎日この大学に顔を見せている。
「前から言ってますけど、そもそも強い人と試合をしたいなら、この大学には柔道部や剣道部がありますよ? そっちの学生たちに挑まれたらどうですか
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