1. あなたと言葉を交わしたくて
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今日の献立が乗ったお盆を僕に手渡してくれる彼女が、僕に声をかけてくれた。
「今日も来てくださったんですか?」
「は、はい! ここのお料理、とても美味しいですから……!」
「ふふっ……ありがとうございます」
彼女がクスリと笑い、ポニーテールが少しだけ揺れた。緊張で僕の胸がバクバクと高鳴る。顔に血が上がってくるのが、自分でもわかる。カッカカッカして、顔が熱い。
「き、今日の筑前煮も、とても、美味しそうですね!!」
「ええ。皆さんにとても喜んでもらってます。私もとてもうれしいですね」
クソッ……緊張で声が上ずる……もっと、落ち着いて話がしたいのに……ッ
と僕がまごまごしていたら、厨房の奥の方から声が聞こえた。彼女が呼ばれたらしい。彼女は厨房の奥を振り返って『はーい』と返事をした後、もう一度僕に振り向いた。
「すみません。何か問題が起きたようなので、私行かなければ」
「あ、はいすみませんお引き止めして……」
「いえ。今日の筑前煮、いっぱい食べてくださいね」
申し訳無さそうに苦笑いを浮かべた彼女は、そういってぺこりと軽く頭を下げた後、厨房の奥へと駆け足で消えていった。和服の上から割烹着を着たその背中は、パタパタと可愛らしい音を立てて、僕から遠ざかっていく。僕が受け取ったお盆の上の筑前煮は、他の人よりも若干大盛りに見えた。
去っていく彼女の背中を見つめる。今日も彼女と話が出来たという喜びと、その楽しい時間が終わってしまったという寂しさ……緊張は去ったけれど、代わりにしょぼくれていく気持ちが胸に去来する。そんな気持ちを手に持つ筑前煮の香りでごまかしつつ、僕は自分の席を探した。店内を見回し、ひと組の小さな艦娘さんと深海棲艦さんが座ってるテーブルを見つけた僕は、足早にその席に向かった。
「……すみません。この席、空いてますか?」
「空いてるのです」
「相席させていただいてよろしいですか?」
「構わないぞ。座ってくれ」
さし向かいで座る二人の艦娘さんと深海棲艦さんは、共に優しい笑みで僕を迎えてくれた。艦娘さんの方は背が小さくて、栗色の長い髪をバレッタで上げた優しそうな子。一方の深海棲艦さんは、ブルーの切れ長の目がとてもキレイな人だ。あずき色というダサいことこの上ないジャージを着ているが、不思議とそれが彼女に似合っていた。
さきほど彼女から受け取った夕食をテーブルに起き、両手を合わせていただきますと言った後、味噌汁を口に含む……美味しい。相変わらず、彼女のお味噌汁はとても美味しい。ホッとする。
「とっても美味しそうにお味噌汁を飲んでるのです」
「そうですか?」
「なのです。でもうちの奥さんには負けるのです」
他愛無い会話を艦娘の人と交わした後、炊きたてご飯を口に運び
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