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千雨の幻想
5時間目
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んなことはどうでもいい。
 突然現れた不審な女(?)よりも待ちに待った獲物を優先したい。
 この日のために準備してきたのだ、もうこれ以上長引かせたくはない。
 そう思う彼女は千雨にこう話しかける。

「そこの女、今立ち去るなら見逃してやってもいいぞ、これから忙しくなるからな!」

 と言ってネギ先生の方へ視線を向ける。
 その鋭い視線に気圧されそうになるもぎりぎりのところで耐えるネギ先生。

「まあ、本来私がどうこう言うような問題でもないし、できればこのまま高見の見物しちまうのが一番なんだけどな――」

 瞬間、千雨の姿が消える。
 その姿を捉えられたのは機械である茶々丸と戦闘経験豊富なエヴァンジェリンのみ。

「生憎、弱い者いじめを見逃せるほど人間が腐っちゃいねえんだ」

「え? ええ!? 今そっちにいたのに!?」

 ぽん、とそう言ってネギ先生の肩に手を置く。
 急にとなりに出現した千雨に困惑を隠せないでいるネギ先生。
 今千雨が行ったのはそう珍しい技ではない。
 人間が誰しも持つ生命エネルギーを燃焼させて得る『気』という力により身体能力を強化、さらに紅白の巫女とたまに会う武術の達人である紅美鈴から教わった体術。それらを合わせたことによって瞬間移動のごとく自身を高速移動させる技である。これを極めることにより『縮地』とよばれる極地へ至ることができるが、千雨自身、自分がそこまでこれを使いこなせているとは思っていない。
 それでも、半吸血鬼となった一般人や戦闘経験の浅いネギ先生が姿を見失うのには十分すぎるほどの速さであった。

「は、後悔しても知らんぞ」

 とエヴァンジェリンは言い放つが内心彼女は焦っていた。

(あれほどぼ瞬動を使う手練れ、となると茶々丸一人では厳しいか……仕方ない、少々急ぐとしよう)

 今宵、麻帆良を覆う結界の一部をハッキングで機能不全に陥らせてはいるが、それも永続するというわけではない。
 麻帆良の職員や魔法先生たちが結界を修復すれば、たちどころに彼女はそこらへんにいる一般人の少女と変わらないくらいに弱体化してしまうことだろう。

 こうして、吸血鬼&ロボットVS子供先生&不審者というまたもや奇妙な決闘が行われることとなった。



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