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東京レイヴンズ 異符録 俺の京子がメインヒロイン!
邪願 2
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的な態度はどこへやら。川平は肩を抱きよせてきて馴れ馴れしく手をにぎって好色なふくみ笑いを浮かべている。

「あの、あたしそういうのはしませんっ」
「だれか操を立てる相手でもいるのかな。でも黙っていればばれたりしないし、彼氏だってこういうことがあるって承知してアイドル志望の子とつき合ってるんじゃない?」
「そういう問題じゃありませんっ」

 芸能界でアイドルや女優につきものなのが枕営業という、黒い噂である。
 枕営業はデメリットのほうが大きく、滅多にないとされる。せまい業界なので噂はすぐに広まるうえ、それによって一時的に仕事を得ることができても次の仕事でも求められ、際限がなくなる。さらに、その人との関係がこじれたりすると、その人が関連する仕事が受けられなくなる。苦労してせまき門を突破して声優になったのに、そんなことで業界を去るのはもったいないというわけだ。

「ていうか彩菜ちゃん、恋人いないよね」
「……はい、いません。けどそれがなにか――」
「今フリーってわけじゃなくて、彼氏がいたこともない。バージンなんでしょ」
「……はい」
「それがいけないんだよ!」
「な、なんですか。どういう意味ですか?」
「恋をしたことのない人間に恋をしている演技ができるかい? これは演技指導だよ、ぼくのことを恋人だと思って身をまかせてみなさい。きっとなにかがつかめるから」

 そんなむちゃな、だったら殺人犯の役は実際に人を殺さないと完璧ではないとでも言うのだろうか。

「こわがらずにぼくに身を任せてごらん、色事は芸の肥やしになるんだから。それにバージンだと病気だと思われちゃうよ」

『それはわしらの花嫁だ、横取りするんじゃないよ』

 音とも鳴き声ともつかない奇妙な旋律は彩菜の耳にはそう聞こえた。

「え?」

 川平の肩越しに老人の顔が見えた。白濁した眼に骨と皮だけの貧相な顔にいやらしい笑みを――川平の浮かべている好色な笑みよりもさらにいやらしい、そしておぞましく邪悪に歪んだ笑みが貼りついていた。

「豆泥棒にはお仕置きだよぉ」

 こんどははっきりたした日本語で、そう聞こえた。まちがいない、目の前に姿を現したこの老人がしゃべっている。あの暗い道で聞こえた厭な笑い声の主はこいつだ。

「な、なんだおまえはっ!? ひえぇぇぇッ!」

 振り向いた眼前にいたのは異形。
 上半身こそ人間に似ていたが、下半身は虫そのものだった。
 黒光りする黒い殻に羽虫のような翅。細くてぎざぎざした六本の脚が伸びている。
 昆虫人間。
 虫と人の身体がつぎはぎされた奇怪な生き物が口もとから飛び出した黒い牙を川平の身体に突き立て、しわくちゃの手から伸びた黄色い鉤爪で引き裂く。

「うわぁぁぁッッッ!?」

 川平は必死に
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