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東京レイヴンズ 異符録 俺の京子がメインヒロイン!
邪願 2
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 帰り際にひとりの中年男性から声をかけられ、名刺を渡された。
 川平浩瀬。
 彩菜もその名は知っていた。有名なアニメ制作会社に籍を置くプロデューサーで、ラジオのパーソナリティーや構成作家もこなす、マルチメディアクリエイターだ。

「え? あ、はい!? はい! ●●事務所、所属。花園彩菜です!」
「だいたいこういう見学の場に来る子達って、ミーハー気分が隠せなくて浮わついた感じになっちゃうんだけど、君はちがったよ。真摯に学ぼうとする気持ちが伝わって来たから。ちょっとお茶でも飲みながら、お話できるかな?」
「よろこんで!」

 彩菜のような駆け出し。いや、駆け出しの域にすら達していない声優の卵にとってアニメ制作会社のプロデューサーとつながりを得られるのは、まさに僥倖。ことわる理由はない。



「それで君はどうして声優になりたいなんて思ったの?」
「あたしの考えや感動を、作品にしてたくさんの人に伝えるため――」
「どんな声優になりたいの?」
「水晶みたいな声優になりたいです」
「水晶?」
「はい。――あたしが養成所ではじめて学んだときに、講師のかたから『役者は水晶のようでいなさい』て教えられたんです。どういう意味なんだろうと考えて、音響監督やプロデューサーさん。みなさんの意見を水晶のように取り込んで声として反射させるという意味だろうと思ったんです。いろんな光を吸収して。漏らさずにキレイなまま声に反映できる、そんな声優になりたいって――」
「ふんふん――」



 翌日、彩菜に好機がおとずれた。
 ひと目見て彩菜の演技を気に入った。演技に対する情熱に感じ入った川平が一席設けたのだが、そこでトントン拍子に話が進み、役をやらせてもらうことになったのだ。
 さらに後日、その川平から個人的に食事に誘われることがたびたびあった。
 正直最初のうちは、いわゆる枕営業を求められるのかと恐々としていた。
 というのも川平は会社の慰安旅行にお気に入りの若手女性声優を帯同させたり、人気アイドル声優に「パパ」と呼ばれていたりと、そういう方面の噂のある人物なのだ。
 彼との仲を邪推されたある女性声優は自身のツイッターに猥褻な画像を連投され、活動停止を余儀なくされたことがある。
 だが実際はそのようなそぶりは皆無。アルコール類の強要もなく、実に紳士的な態度だった。
そのことに安心しきったその時、川平は男の本性をあらわにした。

「この業界で成功するにはどうすればいいな、わかるよね? 一歩先に行きたいなら――」

 東京近郊にある小さな山。眼下に広がるみごとな薄野は、ここが都内とは思えない風情を出していた。そのような知る人ぞ知る隠れた観光スポットに川平の車で連れられてきた彩菜は、身体を求められたのだ。
 それまでの紳士
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