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東京レイヴンズ 異符録 俺の京子がメインヒロイン!
邪願 2
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(う〜ん、ラノベだなぁ)

 思わず反復。あまりにもラノベラノベしているのだ。
 
「ラノベだねぇ、これ」
 
 しかしそう思っているのは彩菜だけではないようで、ほかの見学者の口からも似たような感想が漏れた。

「またこのパターンか」「ま、ラノベってやつだな、うん」「なんだかみなさん声を出す機械に徹しているって感じですね」「最近のオタクはこんなんが面白いの?」

 揶揄しているのは見学者だけではない。音響スタッフの口からも侮蔑まじりの言葉が出ている。コントロールルーム内はたちまち生暖かい笑いの空気につつまれた。
 この業界に限ったことではないが、世間のライトノベルに対する風当たりは強い。いや、むしろおなじオタク業界からのほうから辛辣な評価がくだされている。
 真偽は不明だが某アニメ監督など「絵も描けない曲も作れない演技だってできない。それでもこの業界にしがみつきたいのがラノベ作家だ」などと言ったとか言わないとか――、そういう話は彩菜もよく耳にする。
 もっともさすがにそれはデマのたぐいだろう。
 それを言ったら「演技もできない曲も作れない話も書けない。それでもこの業界にしがみつきたいのがイラストレーター」とも「 絵も書けない曲も作れない話も書けない。それでもこの業界にしがみつきたいのが声優」とも言い換えることができる。
 アニメひとつ作るのに様々な役割の多くの人たちが必要とわかっている監督の口からそのような言葉が出るわけがない。

「…………」

 まわりが嘲笑するなか、彩菜は先ほどまでは自分もおなじようなことを思っていたことを恥じた。

(みんなバカにしてるけど、あんまり人のこと言えないよね。顔だけ声優とか、量産型作り萌え声とか、声色を変えれば演じ分けているとかんちがいしているとか、あたしたち声優だって、けっこう世間の風当たり強いし。だいたい作家先生の書いてくれた本があるからあたしたちの仕事があるわけだよ? それをあざ笑うだなんてとんでもない!)

 世間の人はラノベラノベと貶めるが、少し考えれば四〇〇字詰め原稿用紙にして三〇〇枚や四〇〇枚もの文章を、きちんとした日本語で起承転結のあるお話を作ることがいかに困難かわかる。
 競争率何百倍という新人賞を勝ち抜いてデビューするというのは大学入試よりもはるかに狭き門だ。
 自分では一字も小説を書かないくせに「ラノベなんてだれでも書ける」とあざ笑う者の数は実に多いが、そのような手合いは考えを改めるべきだろう。

(反省、追求、努力! 人の振り見て我が振り直せ!)

 生ぬるい空気の中で彩菜だけは先輩たちのアフレコ現場を食い入るように見つめ、なにかをつかもうと必死なった。



「花園彩菜君でしょ? 他の子達とちがってずいぶん熱心に見てたよね」
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