フルスイング
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しい。おかげで監督もイライラしてきてるし、ここは点数を取らないと空気が変わらないわ)
とは言ってもすでにカウントは1ボール2ストライク。このままではダブルスプリットの餌食になるのは目に見えている。
(でもここまでダブルスプリットは2球しか使ってない。ツバサの言う通り、ヒジに大きな負担がかかるからかしら?けどそれなら・・・)
終盤までとっておきは残しておきたい。ここは打てるかわからないダブルスプリットよりも高速スプリットに狙いを絞る。
ビシュッ
真ん中低めに来たボール。ストライクだと思われたボールはそこから沈み始めるが、あんじゅのバットは止まらない。
ガッ
鈍い音と共に転がる打球。完全に打ち取った当たりだが転がったコースがいい。三遊間の深いところに転がったボールは絵里がなんとか止めたものの、あんじゅが全力疾走で一塁に到達するところだったため投げれなかった。
「ナイバッチ」
「どこがよ。あんなショボいヒット」
この試合両チーム通じて初めてとなるヒットにも不満げな顔を崩せないあんじゅ。結局このあとの5番の鈴木が三振に倒れランナーを二塁に進めたものの無得点に終わった。
「よく凌いだぞ!!ピンチのあとはチャンスが来やすいからな。気持ち入れてけよ!!」
ピンチを凌いだ音ノ木坂ナインを剛の元気な声が迎え入れる。その様子を見ていた孔明は楽しそうに微笑んでいる。
「まさかここまでダブルスプリットを2球しか使わないとは・・・剛らしいいい配球をするな、あのキャッチャー」
穂乃果のことを高く評価する彼に照れ臭そうな反応をする雪穂。彼女が穂乃果のキャッチャーであると聞くと孔明は驚きの表情を浮かべた。
「孔明さん!!今度亜里沙にもダブルスプリット教えてください!!」
「ダメだ」
「えぇ!?なんでですか!?」
目を輝かせ懇願する少女をあっさり切り捨てる。なおもしがみつく彼女を押し退けると、彼は教えられない理由を伝えた。
「あのボールはヒジへの負担が他のボールの比じゃないんだ。俺でも1試合で10球投げれるかどうかだよ」
「「え・・・」」
信じられないような言葉を前に固まる2人。しばらくして正気を取り戻した雪穂が彼に慌てた様子で問いかける。
「じゃあ、なんでそんな危険な球を花陽さんに教えたんですか?」
「なんで教えたか・・・か」
マウンド上で投球練習をする小さな少女を見ながら、彼は不敵な笑みを浮かべながら答えた。
「剛のチームのピッチャーだから・・・かな?」
低くなった声に背中を凍えさせる亜里沙と雪穂。試合を見つめる青年の目は、一際厳しくなっていた。
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