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アタエルモノ
第七話
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あ、トースト食わえた可愛い女の子と曲がり角でぶつかってくるわ。』
 
『…………………………うん、行っておいで?』
 
あ、しまった。
 
俺は沙紀のそんな返事を聞いてとてつもない不安を感じていた。

絶対、『そんな感じの出来事』が起こす気だこいつ。どうせ構ってくれなかったって言ってそんなことをするだろう。
 
『………………うし、乗ってやろうじゃねぇか。』
 
しかし、山があったら登りたくなるのが人間。俺はそう伝えると、教室に向かって歩き始めた。
 
校内地図を見る限り、最低でも五、六回は曲がり角がある。
 
さぁて、どこでどんなのが来るのやら………………。
 
『あ、福島君ってのは?』
 
『ノーサンキューだバカ野郎。』
 
 
 
 
 
―数分後―
 
 
 
 
 
さて、俺は沙紀の部屋を出てから自分達の教室に向かって歩き始めているわけなのだが。

「…………わくわくしてるってのは、まぁ、うん、仕方ないな。」
 
だって、男の子だもん。そんなベッタベタなシチュエーションなんて、今どき漫画の中ですら見たことがない。
 
「…………これで猫型ロボットみたいなのとぶつかったらどうしようか。」
 
というような一抹の不安も抱きつつ、三つ目となる曲がり角を曲がった。
 

 
 
ドンッ!
 
 
 
 
 
すると、なにかにぶつかられたような感覚。
 
「きゃっ!」
 
いかにも女の子らしい、高い悲鳴。

…………沙紀さん、マジすか。
 
さっきは悪く言ってすまない。今度会ったときになんかお礼をしよう。
 
「あぁ、ごめん。大丈夫?」
 
と、いかにもな感じで尻餅を付いている女の子を見る。
 
 
 
 
 
そして、動きが止まる。
 
 
 
 
 
 
「いやー、大変だったよー。他の人に見付からないように『瞬間移動』して待ち伏せしてね?君が来たところにレッツゴー!いやぁ、我ながら無駄のない動きだったよ!」
 
「その発想が無駄だわ!!」
 
結局、俺の中で完成された約束が一つできた。
 
 
 
 
『神谷 沙紀からは逃げられない。』
 
 
 
 
 
「ところで、ここから二つぐらい先の教室で、なんか上級生と思われる男女が(自主規制)なんだけど、見に行く?」
 
「…………勘弁してくれ。」
 
親父、お袋。
 
今から地元の高校に転入しちゃダメですかね…………?
 
俺は遠く離れた両親に絶対に叶わないであろう願いをしていた。
 
…………だれだ、明日の俺、ファイトとか言ってたやつ。
 
 
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