ソードアート・オンライン〜剣の世界〜
1章 すべての始まり
6話 ツカサとアスナ
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ツカサの息は、一瞬止まってしまった。そして、同時に心の中に、温かいものがあふれてくるのを感じる。いや、あのような人たちなうえに、表面でしか心配していないだろうし、アスナも、こんなに長い間会わなかったのだから、自分のことなど忘れてしまって当然だろうとずっと思っていた。
だが、アスナが涙を流した理由は、ツカサが生還したからだった。そのことを理解した瞬間、ずっと肩に入っていた力が、抜けていくようだった。
「遅くなって悪かった…」
そういって、ツカサはアスナの頭へと手を持っていくが、触れる直前でびくりと手が止まる。…だが、結局その手はアスナの頭を撫でるに至った。
アスナが泣き止むまで、ツカサはずっと彼女の頭を撫で続けた。
そのあと、アスナといろいろな話をして、リアのいる宿屋に行ったのは、すでに10時を回ったころだった。今日は朝から晩までフィールドを駆けまわっていたのだから、リアはもう寝ているだろう。
そう思いながら、扉の解除をして開けると、案の定リアはベッドの中で寝息を立てていた。武器や防具を解除し、身軽になった体を、リアを起こさないように、慎重にベッドの中に滑り込ませる。体にじんわりと温かさが染み渡ってきたとき…
「ツカサ君…?」
どうやら、起こしてしまったようだった。横を見やると、灰茶色の瞳がのぞいている。
「起こしたか」
「ううん、いいの」
リアはそう言って、息を吐いた。
「ねぇ、ツカサ君…手、握ってもいい?」
「いいよ」
リアは、布団の中にあるツカサの左手を両手で包み込むようにして握った。布団のよりもさらに温かいリアの手に包まれると、なぜだか安心するような気がする。
「ツカサ君…」
「何?」
「ふふ…なんでもない」
急にツカサの名前を呼んだと思えば、なんでもないという。
「ツカサ君…」
「だから何?」
「なんでもないよ」
2回目となり、そろそろリアの頭を小堤いてやろうと、ツカサは左を向く。だが、その瞬間固まった。
リアの閉じられた目から、雫が零れ落ち、枕に吸い込まれていく。
「リア…?」
「何でも、ないよ…」
かすれた、小さな返事。やがて、リアが再び寝息を立て始めるころまで、ツカサは固まったままだった。
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