ソードアート・オンライン〜剣の世界〜
1章 すべての始まり
6話 ツカサとアスナ
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さやくような小さな声の問いに、ツカサはカップに視線を落としたまま答えた。6年近くも音沙汰がなかったのだし、テロから行方不明になったのだから、死亡と判断されるのは至極当たり前だと理解しているが、生きているのに墓を作られ、祈られていたと思うと非常に奇妙な気持ちになる。リアもこういう気持ちだったのだろうかと、ふと思ってしまった。
だが、顔を上げ、目の前にいる彼女のハシバミ色の瞳を直視すると、その思考は彼女に対するものへと変化する。最後に会ったのは、ツカサが10歳で、アスナが9歳の時で、6年たった今ではすっかり大人びて、美しく成長している。アスナから見ても自分はずいぶん変わっただろう。あの頃は140pほどだった背丈は、今では176pまでになっているし、声変わりだってした。髪型は変わっていないが…。
「いえ、いいんです。また、生きていてくれただけで、こうしてまた会えただけでいいんです」
そういってアスナは微笑んだ。ツカサは顔を再び下に向けると、曖昧にうなずいた。
以前はどうやって彼女に接していただろうか。ツカサはふと、そんなことを考えてしまう。何年もあっていないせいで、接し方もわからなくなってしまった。まるで初めて会う人のようで、居心地が悪い。かなりの人見知りのツカサにとって、2人だけというこの状況はかなりの苦痛だった。いや、昔のままだったのなら、話せていただろうが、お互い外見も、恐らく中身さえも違うのだから、難しいと言ったらこの上ない。ツカサは、こんな時にコミュニケーションスキルが欲しかったと心の底から後悔する。リアというパートナーを見つけてからは、彼女に任せ、人付き合いはとことん避けてきたことが災いした。
だが、ポタリ、という雫が木製の机に落ちる音を聞いた瞬間、そんな思考は一瞬にして消え去った。
「え…」
昔からどんな時も気丈にふるまっていた彼女。恐らく、今でもそんな性格は変わらないはずなのに、そんな彼女が涙を流していた。それは一向に止まる気配がなく、逆にますます増えていく。
ツカサは大いに慌てた。そもそも、なぜ泣いているかということが全く意味が不明なうえに、泣いた女性を慰めるなどというマニュアルはツカサの頭の中には存在しないからである。リアが泣いている姿はここ数年、まったく見ていないし、彼女以外に親しい女性など、環境のせいもあって、いるはずがない。
たらりと仮想世界の冷や汗がこめかみを伝う。いったいどうしたものか。
頭を最近の中で一番にフル回転をさせる。リアに連絡を取ってみる。…いや、寝ている可能性もあるし、何より、今はメニューウィンドウを開くべき時ではないと、直感的に思った。つまりは…自分一人で、彼女と対峙するしかないわけだ。しかし…
「ほんとに、ほんとに生きててよかった…!」
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