暁 〜小説投稿サイト〜
遊戯王GX〜鉄砲水の四方山話〜
ターン84 科学水龍と大地の龍脈
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めてこなかったので、ありがたく寮内に入らせてもらう。勝ち逃げみたいで申し訳ないけど、そんなこともあるさ。ふと人波の向こうに、十代がデュエルしている姿も見えた。相手は……ホルスの黒炎竜と王宮のお触れ、いわゆるお触れホルスの布陣だ。強力な相手に苦戦しているようではあるけれど、最終的に十代ならなんのかんの勝つだろう。
 部屋に入ってすぐのところにある洗面台の蛇口をひねり、水の冷たさに顔をしかめながらも腕輪にどばどばと水をかけ始める。だがものの数秒もしないうちに突然、全身に悪寒が走った。この感覚、覚えがある。

「ミスターT……!」
『最近大人しかったからな。ようやく尻尾を出してきたか』

 やむを得ない、この緊急事態に悠長に補給してる暇はない。表口にはまださっきの後輩たちがいるだろうから、窓側に回り込んで飛び降りよう……としたところで洗面台まで取って返し、慌てて蛇口を逆方向にひねり水を止める。出しっぱなしは水道代へのダイレクトアタックだ。
 今度こそ窓を開けて飛び出すと足音を立てないように着地、島の奥に向けて走り出した。ミスターT独特の闇の気配というか嫌な感覚が、みるみる近くなってくる。

『そこだ!』

 チャクチャルさんの叫びに応じて足を止め、サッと周囲を警戒する。
 ……いた!たった今まで誰かとデュエルしていたらしく、腕に付けたデュエルディスクの光が消える瞬間がちょうど見えた。相手は、誰かはわからないが後輩のイエロー生だ。あの怯えた様子からいって、恐らく瞬殺されたのだろう。

「さて。では約束通り、君には消えてもらおう」
「ひ、ひぇ……く、来るな!近づくな!」
「さらばだ」

 ミスターTがすっと片手を伸ばし、腰が抜けて座り込んだまま必死に後退しようとするイエロー生に近づいていく。状況からいって、ぎりぎり間に合ったってところか。

「待て、ミスターT!」

 伸ばした手が、ぴたりと止まった。ゆっくりと振り返るその顔のサングラスの奥は相変わらずうかがい知れないが、その表情を見れば明らかに僕の乱入に苛立っているのがわかる。

「もう私に気が付くとは、まったく暇なことだ」
「もう僕に気づかれるとは、まったく無能なことで」

 できるだけ口調をまねて言い返してやると、さらに苛立ちが増したのが伝わってくる。突然のことに思考が追いつかないのか呆然としたまま成り行きを見ていたイエロー生を見下ろし、無言で顎で指し示す。それでも動こうとしないので、ちょっぴり声を荒げて活を入れた。

「早く行きな!」
「う、うわあ〜っ!」

 さすがのイエロー君もそこでようやく我に返ったのか金縛りが解けたかのように跳ね起き、這う這うの体でレッド寮の方に向かって走り出す。その背中が木々の向こうに完全に隠れたのを確認してから、ミスター
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