第5章:幽世と魔導師
閑話12「隠れた動き」
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うに、あまり見せびらかさないようにしていたが……幽世の大門が開いた事でそれは一変した。
確かに少女は一般人だった。…そのはずだった。
しかし、“物見の力”の“縁”を探る力と、妖を目撃した事で、“思い出した”のだ。
それは、所謂“前世の自分”。一つ前の人生の記憶だった。
本来なら自分ではない自分の記憶で、混乱するはずだったが、彼女は別だった。
やけにすんなりと記憶が定着し、“物見の力”の扱い方や、妖に関する知識も覚えたのだ。
「……それで、私に出会って同行する事にしたのか」
「はい。式姫に関しても知っていましたから」
対する、鞍馬はそこまで特殊と言う程でもなかった。
椿や葵のように、ひっそりと生き続けていた式姫の一人に過ぎなかったのだ。
幽世の大門が開いた際、京都に滞在していたため、そのままなし崩し的に京都での戦いに参戦し、裏で被害が出ないように奔走していたらしい。
巧みな采配によって、優輝達にも奔走していた事は知られていなかったが。
「しかし、なぜそこまでするんだ?何か理由があるのか?」
「……幽世は、私にとっても無関係ではありませんから」
「……ほう」
並々ならぬ事情があると、鞍馬は察する。
「その訳を聞いても?」
「……前世の私には、一人の友人と姉がいました。詳しい事情は省きますが、私を含めた三人は幽世に一度落ちたのです」
「…それで、同じ幽世が関わっている現状を見て見ぬふりはできなかったのか」
「…はい」
理由はそれだけじゃないだろうと、鞍馬は気づいていた。
省いた事情の中にその理由があるだろうとも思っていたが、今はそれを聞いている暇はなかった。
「……ちっ」
「っ…!」
現れた妖に対し、鞍馬が鳥の羽で作ったような、八つ手の葉型の扇を構える。
「葉月、戦えるか?」
「……いえ、前世ならともかく、今は自衛すら難しいです。記憶に体がついて行っていないので…」
「そうか。では…」
―――“扇技・護法障壁”
「しばらく、そこから動かないで欲しい」
「…分かりました」
障壁を張り、鞍馬は前に出る。
「ふむ、全盛期には遥かに劣るが……」
「ガァアアッ!」
襲い掛かる妖に対し、鞍馬は自分の体の調子を確かめるように呟き…。
「この程度なら造作もない」
―――“極鎌鼬”
風の刃にて、切り裂いた。
「遅いぞ」
「ギィッ!?」
「ふっ!」
鞍馬は本来、術をよく扱う式姫だ。
しかし、天狗としての身体能力がない訳ではない。
そのため、持ち前の素早さで妖に肉迫し、蹴りで吹き飛ばした。
「直接動いて戦うと言うのはあま
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