帝都にて
[1/12]
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
時計塔、サンシャイン凱旋門、聖バルディア大聖堂、サンタローズ大通り、フェルドラド宮殿、帝国博物館、王立公園(ロイヤル・パーク)、公衆浴場、闘技場、賭博場、劇場、美術館、図書館、施療院、交易所、アルザーノ帝国大学内には魔術に限らず様々な技術や知識を教える教育機関が入っている――。
「もし君が帝都オルランドに飽きることがあるとしたら、それは人生そのものに飽きるということさ」
とはライツ=ニッヒの著作『セルフォード大陸の歩きかた』に書かれた名言だ。活力と熱気にあふれた街は一日ごとに人口と建物が増え、変化は目まぐるしく、オルランドに暮らす人々は退屈する間もない。
先代女王は奉神戦争終了後の混乱にあった国内をまとめ、秩序を回復した。
街道を整備し、無料の休息所や施療院を設置し、多くの井戸や貯水地を作って耕地を開いた。
治水、開発、防衛、福祉。その業績ははかり知れない。
政治家であると同時に文化人で、すべての宗教と学芸を平等に保護し、聖俗貴賤を問わないボランタリズムを大いに奨励して社会の格差や不平等を極力解消しようと、大いに尽力した。
その弱者救済の精神は現女王アリシア七世にも色濃く伝わっている――。
「――セツルメント運動をさらに進めたようなものか。しかしこうなると既得権益層や保守派からは煙たがられていたのは、想像にかたくないな」
秋芳は歴代の女王の偉業を称えるコーナーを後にすると、次の展示場に向かった。
目の前に広がるガラスケースの内容物は超魔法文明時代の遺品で、刀剣とその鞘、酒杯、皿、衣類などの日用品がならんでいた。
聖暦前に存在していたとされる古代魔術を使う古代人たちが築いた文明。その遺物には古代魔術による物理的・魔術的な破壊を無効化する霊素皮膜処理(エテリオ・コーティング)が施されており、数千年の時を経ても当時の姿のままで現代まで残っている。
何千年も昔にそれらを作り、使用した人々。何千年か後にそれらを発掘した人々。
彼らの営みを想像すると、胸が熱くなる。
アルザーノ帝国博物館。その巨大さと所蔵品の多さから、一日どころか一週間あってもすべてを見学できないと言われている。
「まるで大英博物館だ。無料で見学できるところも似ている」
イギリスにある大英博物館の入場料は無料。正確には入場者による任意の寄付金制で、入り口の所に透明なボックスがあり、そこに寄付金を入れて入るのだ。
ここアルザーノ帝国博物館もおなじシステムを採用している。
「この国では日本とちがって国民の税金が正しく有効に使われているなぁ」
まだすべての展示場を巡っていないが、閉館時間になったので退館することにした。
夕焼けに染まった高層建築が目の前に広がる。そのひとつひとつがフェ
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ