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ルヴァフォース・エトランゼ 魔術の国の異邦人
帝都にて
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私の出自を卑しむのは自由ですが、すでに認められている功績をいぶかしむのは帝国賞勲局の選定、さらには女王陛下の差配に問題があると言っているようなものですよ」
「これはこれは、猿かと見えたのは虎の威を借る狐であったか。だがアルザーノ帝国と女王の名を掲げれば万事解決するとはゆめゆめ思わぬことだ。その名が仇になり敵を作ることもありえる」

 アルザーノ帝国は一枚岩では無い。
 帝国政府内でも国軍省や強硬派議員からなる武断派と魔道省や穏健派議員からなる文治派とのいさかいが絶えず、その二派のなかに王室直系派、王室傍系派、反王室派、過激派極石、保守的封建主義者、マクベス的革新主義左派、帝国国教会右派といった派閥がある。
 さらに、それぞれに青い血側と赤い血側など、アルザーノ帝国は様々な思想主義と派閥が渦巻く混沌の魔窟といえた。
 そもそもアルザーノ帝国王家の始祖は犬猿の仲であるレザリア王国王家の系譜に連なっているのだ。そのため帝国貴族のなかでさえアリシア七世の統治正当性に異を唱える者まで存在する。

「金言、肝に銘じておきます」
「アルザーノではアルザーノ人のするようにせよ。野蛮な習慣や愚かな迷信を持ち込むな」

 クェイド侯爵はそう言い捨てると若い貴族たちに背を向けて、別の貴族たちと歓談をはじめた。

「――人種差別のどこが悪い。民族や人種には優劣の差があるのだ。我々のような優秀な民族と、そうでない者が確実に存在する」
「――我々の国から富をかすめ取ろうとする貧乏人どもを追い出さなければ、富を食いつぶされてしまう」

 似たような思想の貴族たちと、外国人を蔑視する内容の話に熱をあげている。

「やれやれ、あの老人はレザリアのほうばかり見過ぎて自国の現状が見えないみたいだね。オルランド市民が深夜の土木作業や下水処理みたいな汚れ仕事をやらなくなっている現実があるのに、外国人労働者を全員追放なんかしたらオルランドは都市として機能しなくなるってのにさ」
「でしょうね。街にはゴミがあふれ返り、上下水道の工事もできなくなる。ヴァドール伯は異民族や労働者階級の人々に対して理解があるようで」
「あちこち旅をしているからね、だれもがみんな外国人さ。レザリア人だってみんながみんな狂信的ってわけでもないのにねぇ」
「そのレザリア相手にあんな調子でよく他国との交渉が務まるものですねぇ」

 ヘイトスピーチに花を咲かせるクェイド侯爵を遠目に当然の疑問を口にした。外国人嫌いの人間に、外国相手のやり取りができるとは思えない。

「実際の彼の人となりを知る者でそれを疑問に思わない人はいないよ。我が国の誇る敏腕外交官がことごとく追い返されたのに、なぜかクェイド侯だけはレザリアで歓迎されているんだよね」
「ははぁ……。その忠臣を厳にして、その賂いを薄くし
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