帝都にて
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のである。
「それにしても……」
クェイド侯爵の秋芳を見る目は、はめをはずした若輩者を軽視するような生やさしいものではなかった。
この世でもっとも愚かで醜い罪人を、いや獣や虫けらを見たかのように顔をしかめる。
「どこの馬の骨ともわからぬ下賎の者などに放埒に褒賞するとは。犬や猿にも官位官職を与えるのは時間の問題だな。……いや、すでに黄色い猿なぞに賞を下賜しているか」
…………ッ!
秋芳に対して侮蔑と敵意をむき出しにして嘲笑している。言葉の冷水によって冷やされた場の空気は、さらなる言葉の冷水によって氷点下以下にまで冷やされた。
「言葉が過ぎますぞ、クェイド侯!」
異を唱えたのはヴァドール伯だった。
「彼は悪魔やゴーレムを使役するテロリストの襲撃からシーホークを護った英雄。その功績により騎士爵の位をうけたまわるのは当然ではないですか」
「それが分不相応と言っているのだ、異民族に叙勲するなどなげかわしい! そもそもそやつがテロリストの仲間ではないと言い切れるのか。自作自演ではないのか、んん? 」
(思い出した。こいつがあの有名なクェイド閣下か。……あれ? 『テロリスト』に『自作自演』……。なんかひっかかるな。なにか、わりと重要なことを忘れている気がする。双角会がらみだったような気がするが、こっちは、思い出せん)
常に一触即発の状態にあるレザリア王国と折衝し、紙一重の平和を維持している辣腕外交官。それがクェイド侯爵に対する世間の評価だ。
そしてもうひとつ、彼は過度の外国人嫌いでも有名だった。
周辺諸国への侵略と弾圧を続けるレザリア王国に対してアルザーノ帝国は辺境の国々と積極的に友好を結び、好条件で異民族を受け入れている。その中にはレザリアによって祖国を滅ぼされた人々も大勢いた。
レザリアを憎む国々と手を結ぶ合従策の布石だ。
これにより聖エリサレス教のみを唯一絶対のものとし、信仰の自由が存在しないレザリア王国とは異なるアルザーノ帝国には民族も宗教も異なる人々が多くあつまった。
外国人を積極的に受け入れることは労働力の確保と消費の拡大にもつながる。
こんにちの繁栄は彼らの働きによるものが大きい。
女王の異民族受け入れ政策は人道的な見地からだけではなく、実際に利益を生み出しているのだ。
これが、クェイド侯爵には気にくわない。
彼は日頃から「私はレザリア王国になら出かけるが、シルヴァースや東方のような不潔で野蛮な国にはいかん。レザリア人は狂信的だが少なくとも我々とおなじ人間だ。だが辺境の蛮夷どもときたら、毛皮のない獣ではないか」などと公言してはばからず、「アルザーノ帝国領から目障りな外国人労働者を追い出せ」という強硬論の持ち主だった。
「クェイド侯爵。あなたが
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