帝都にて
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みたいにな」
鼠小僧が大名屋敷を専門に狙ったことには理由がある。
市井の人々が暮らす町人長屋には大金は無く、金のある商家はその金にあかせて警備を厳重にしていた。
いっぽう大名屋敷は参勤交代等に代表される江戸幕府の経済的な締めつけや謀反の疑いを幕府に抱かせるおそれがあるという理由で警備を厳重にできなかった。
敷地面積が非常に広く、いったん中に入れば内部の警備が手薄であったり、人の出入りが多くまぎれやすいこと。また面子と体面を必死に守る為に被害が発覚しても公にしにくいという事情や、男性が住んでいる表と女性が住んでいる奥がはっきりと区別されており、金がある奥で発見されても女性ばかりで逃亡しやすいなど、江戸において最も大金を盗みやすい種類の場所であったのだ。
「ご丁寧に対魔術の備えまでしてある」
秋芳の見鬼見鬼が城壁に施されている魔術をとらえた。
いかに堅牢鉄壁の城塞であっても、魔術をもちいればたやすく潜入できる。
深い濠をめぐらせ、高い壁を築いても【レビテート・フライ】で飛び越えられる。
【セルフ・イリュージョン】の応用で透明になれば衛兵に気づかれることなく侵入できる。
もし見つかっても 【コンフュージョン・マインド】、【チャーム・マインド】、【ファンタズマル・フォース】などの呪文を駆使して幻惑すれば、切り抜けられる。
そのため重要施設には対魔術用の備えがしてあることが多かった。
、 魔術の行使に反応してアラーム発報したり、空間に【ディスペル・フォース】を張り巡らせて魔術を使えなくするなどが有名な魔術師返しだ。
この城壁には後者、【ディスペル・フォース】が所々にかかっており、城壁の近くでは魔術が使えず、あらかじめ唱えた魔術も無効化されるようだ。
「軍の重要施設や王宮だってこんなに警戒厳重じゃないぞ。こりゃあなにか後ろめたいことをしているにちがいない。まさか本当に人狩りだとは思いたくはないが……」
門を守る衛兵の表情は硬く、同僚と無駄口ひとつきかずに緊張した面持ちで立哨を続けていた。
もとの世界ならば禁感功――隠形を駆使して容易に侵入できるところだが、この世界では呪術の使用がいちじるしく制限されている。
気に属する術ならばそれなりに使えるため、気配を絶つ隠形術ならば使用可能だが、やはり精度は落ちる。
万が一発見されることを危惧し、正面からの侵入は避けて壁面をよじ登ることにした。
壁虎功を駆使して城壁を登りつめ、鋸壁の内側にある移動用の通路に降り立つ。
見渡せばクェイド侯爵の居城と思われる屋敷の他にもいくつか建物が見え、敷地内のそこかしこに外灯の明かりが見えた。ガス灯の放つ橙色ではない、白く鮮明な光は魔術によるものだろう。夜だが見通しは悪くない。
「幾何学式庭園というや
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