帝都にて
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ジテの魔術学院の本校舎並の規模だ。
高さ一〇〇メトラを越える聖バルディア大聖堂や千人以上が入れる帝国劇場など、壮観のひとことに尽きる。
早くも地上の家々や運河沿いの道にはガス灯がともって、大きな蛍が群れをなすように明るい。
フェジテやシーホークにも街灯が灯されるが、立派なガス灯が立つのは大通りや観光スポットだけで路地にまわるとお粗末なものだった。柱から柱へロープを渡し、そこにランプをかけただけだ。もしランプを故意に割ろうものなら厳罰に処せられた。割れたランプから火と油が漏れて火事になってしまうからだ。
また家庭用の照明といえばランプや蝋燭で、ガス灯のほうが明るかったが、ガス漏れやガス爆発の危険が常につきまとっていたし、ガスの臭いで頭痛をおこす人もいた。銀の食器がどす黒く変色するので、大邸宅の厨房や食堂では好まれなかった。
だからガス灯は主として屋外でもちいられるものだった。屋内で使われるとすれば、商店のショーウィンドウや屋内体育競技場くらいだった。
フェジテもそれなりに発展した大都市だが、帝都オルランドの発展ぶりはそれ以上で、夕日とガス灯、自然と人工。二種類の橙色の光に照らされた帝都の姿は、とても雄々しく、美しい。
そう、ここはセルフォード大陸北部イテリア地方、アルザーノ帝国首都オルランド。
秋芳は叙勲式に出席するため、オルランドへ出向いていた。
つつがなく騎士爵の位を戴き、空いた時間を利用して帝都見物をしている――。
わけではなかった。
「明日から魔術競技祭だが、この分じゃ間に合いそうにないな」
アルザーノ帝国では儀礼や祭典などの公式行事には女王陛下と、伴侶である王配殿下がともに出席するのが習わしだが、アリシア七世の王配殿下はすでに逝去しており、ひとりですべての公務に出席している。
これはなかなかに激務であり、王配殿下が存命の頃は各地への式典には王配が行啓し、帝都内での式典には女王が行幸する。という具合に公務を分担していたくらいだ。
そのため近年では成人を迎えた第一王女レニリアが一部の公務を、もっぱら帝都内での行事を引き受けるようになっていた。
今回の叙勲式は各地を巡幸中のアリシアに代わってレニリアが出席して親授するはずなのだが、予定日を過ぎても叙勲式がおこなわれることはなかった。
もともと蒲柳の質であり、急に体調をくずしたという噂があるが、さだかではない。
予定通りならフェジテに帰って明日からの魔術競技祭を観戦できたのだが、どうやら今回の観戦は無理のようだ。
魔術競技祭――。
その名の通りアルザーノ帝国魔術学院で年に三度に分けて開催される、学院生徒同士による魔術の技の競い合い。それぞれの学年次ごとに、各クラスの選手達が様々な魔術競技で技比べをおこなう。
総合的に最も優秀
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