第十一話 決勝戦、見ます その1
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人の姿を見ながら無表情になりながら続けて言った。
「戦う意思があるなら千雪は大丈夫だよ」
「千雪はまだ『負けてない』。私のように惨めな敗北をしていない」
そう言うと無表情から一転して楽しそうな笑みを浮かべた。
「負けはならないんだ。『栗林流に負けは許されていない』。二人も知ってるでしょ?」
それはとても楽しそうな笑顔だったが同時にどこか悲しげな笑み。
そうノンナには見えた。
西住流師範である西住しほは大会関係者用の観覧席に腰を下ろしていた。その真横に栗林流師範の栗林千秋が座っていた。
それだけなのに二人の周りに近づこうとする者は、誰も居ない。
しほは鋭い眼つきで大型スクリーンをじっと見つめ、千秋は相変わらず笑っていた。
片や鋭い目付き片や笑顔では近づこうにも近づけないし、それだけではない。
問題は千秋が『栗林流師範』だからだ。
栗林流は極少数の流派を除いて好意を持たれていない。むしろ多くの敵意を向けられている。理由は色々とあるが挙げるならその戦い方と態度である。
この場で問題となっているのは態度であり、プライベートならしほを『しほちゃん』と呼んでも問題にはならないが公の場でそう呼んでいるので西住流やその関係者からは嫌な顔をされている。
彼・彼女らからすれば『目上』である西住流師範に対して失礼な態度を取っているように見えるのだろう。しかし千秋は態度を改めようとしないのでますます失礼な奴と思われ嫌われている。千秋が口を開くたびに場の雰囲気が悪くなるという悪循環が起きていた。
しかも千秋を含めて栗林流は態度が悪いと思われている。
まあ本人も門下生も全く気にしていないが。
「そろそろ試合が始まるね」
「そうですね」
「どっちが勝つと思う?」
「……私は黒森峰が思います」
千秋の質問にしほはさらに鋭い目付きになりながら答えた。
この試合はただの戦車道の決勝戦ではない。
大洗女子学園は敗北すれば廃校が決定し、黒森峰女学園は去年の敗北は運が悪かった、黒森峰こそが絶対王者であることを示す試合。
もう一つは西住みほと西住まほの姉妹対決、つまり西住流同士の戦いなのだ。しほにとっては後者の方が重要なのだろう。
「私は大洗が勝つと思う」
「………何故そう思うんです?」
「勘だよ」
「そう…ですか……」
それで会話が終わり、二人はじっと大型スクリーンを見ていた。
数分後、大洗女子学園と黒森峰女学園の開戦を知らせる花火が上がった。
「まほちゃんは森を抜けて一気に潰す気だね」
スクリーンに映し出された映像を見ながら言った。
「そのよう
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