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ヘタリア大帝国
89部分:TURN9 ドクツ動くその四
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TURN9 ドクツ動くその四

「それに演説もね」
「演説にはあの頃から自信があったぞ」
「あっても。人は外見も見るものなのよ。それにね」
「姿勢か」
「演説は口でするだけではないのよ」
 グレシアはこの事実を指摘したのである。演説は口だけではなく服や身振り手振りでもするものだとだ。レーティアに対して話すのだった。
「確かに。あの頃から貴女の演説の内容と口調はよかったわ」
「しかしか」
「外見があれで。しかも猫背だと」
「駄目だったか」
「プラカード持って喋ってただけじゃない」
 それがだ。グレシアがはじめて見たレーティアだったのだ。
「あれでは駄目よ。けれどね」
「それでもか」
「私は見たわ。貴女に」 
 他ならぬだ。レーティアにだというのだ。
「貴女のその天才をね。貴女の演説はまさにドクツを救うものだったわ」
「だからあの時私に声をかけてくれたんだったな」
「そう。そしてデパートの仕事を自分から辞めて。ずるずると付き合っていた彼氏とも別れて」
 余計なものをだ。全て切り離したというのだ。
「そして貴女を選挙に送り出してドクツの指導者になってもらう為にね」
「まさにその為にか」
「メイクをして。髪も整えて眼鏡も外して」
 まずは外見からだった。
「猫背も訂正させて衣装もコーディネイトしたのよ」
「ファンシズムに相応しくか」
「もうね。あの頃のワイマール体制じゃどうしようもなかったから」
 こう見ていたのはグレシアだけではなかった。ドクツの国民全てが思っていたことだった。グレシアは先程からソファーにいるドイツとプロイセンも見て言った。
「祖国さん達もそうだったわよね」
「正直な。あの時はな」
「あと少しで死ぬところだったぜ」
 まさにそうだったとだ。ドイツとプロイセンも答える。二人はこれまではレーティアとグレシアの話をコーヒーを飲みながら聞いているだけだった。しかしだ。
 グレシアに話を振られてだ。こう答えたのである。
「明日すら危うかった」
「いや、本当にな」
「そうだったわね。ワイマール体制じゃもう我が国は立ち直れなかったのよ」
「私もそれは感じていた。だからだ」
「独裁ね」
「私がドクツを立て直すつもりだった」
 レーティアはこう言い切った。
「この私の手でだ」
「貴女はそれができたわ。けれどね」
「ただ。独裁を願うだけではなくか」
「ファンシズムが必要だったのよ」
「それで私をコーディネイトしたんだな」
「その通りよ。全てはね」
「そして私は選挙に出た」
 ファンシズムを掲げてだ。そのうえでだというのだ。
「まずは国会議員になり御前は秘書を務めてくれた」
「そうしたら。後はだったわね」
「国会に出られれば後は私のものだ」
 レーティアには自信が
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