第10話:前編
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たら目立ってしまうし、通り掛かった他派閥の団員が聞き耳を立てるかもしれない。
本来なら応接室に案内する所なんだが、人数が人数だ。話し合いの場を会議場の方にしたいんだけど、いいかい?」
「構いません。それに関しては大人数で押し掛けた私達に非がありますので」
小人族の男性――ロキ・ファミリアの団長である【勇者】フィン=ディムナさんの案内で僕達はロキ・ファミリア本拠地内の会議場へと移動し、全員が用意されていた椅子へと座るとフィン=ディムナさんがいきなり僕に頭を下げてきた。
「君がベル=クラネルだね。まずは僕達の派閥の団員が君を侮辱したことを謝罪したい」
「酒で酔っていたとはいえ、あれは派閥の幹部が口にする様な発言ではなかった。同じ派閥に属する者として申し訳なく思う」
フィン=ディムナさんだけでなく、【九魔姫】リヴェリア=リヨス=アールヴさんまで頭を下げてきた。本来、僕の様な駆け出し冒険者に頭を下げる様な人達ではないということもあって、僕は慌てて返答する。
「そ、そんな頭を下げないで下さい。あの時の僕はあの人が言った通り、ミノタウロスから逃げ回ることしかできない臆病者だったんです」
「いいや。ステイタス強化などのレアスキル持ちでもなければ、LV.1でミノタウロスに挑むなど命知らずか、死にたがりのする行動だ。
当然、私やフィンがLV.1の時もミノタウロスに挑んだことなど無い。今は共に派閥の団長、副団長という立場もあって、格上の者が相手でもおいそれと逃げ出すことができないが、もし私達が君と同じLV.1という状態でミノタウロスに襲われたなら、君と同じ行動を取っていただろう」
「リヴェリアの言う通りだ。それに命知らずや死にたがりより臆病者の方が迷宮攻略では有益なこともある。
臆病であるからこそ、周囲の僅かな変化に気付けることもあり、その結果仲間の命を救えることもある。臆病であることは決して恥ずべきことではないさ」
……ディムナさんとアールヴさんは人格者なんだなぁ。掛け出し冒険者や臆病者を馬鹿にすることもなくて、逆に有益な点を挙げて来るんだから。
けど、ディムナさんの言った臆病者って、『斬月』の言っていた恐怖に呑まれない臆病者――つまり、慎重な人間だよね?
ミノタウロスに襲われた時の僕はただただ無様に逃げ惑うだけの臆病者だった。そう考えると僕は一級冒険者である御二人に擁護して貰える立場とは思えない。
「あまり自分を蔑むものじゃないよ。ベル」
僕が自己嫌悪に陥りかけていると、いきなり会議場にいない筈の人間から声を掛けられ
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