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東方
大祖国戦争と人民の財宝
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いた。しかし、その実態はお粗末なものだったのである。
 

 技術はいつ飛躍するか? 答えは戦争である。
 平和を謳歌していたソ連と戦争を繰り返した人間諸国では、いつしか技術レベル(テクノロジー)の差がなくなっていた。


 指示を出したもののレミリアは大祖国戦争なんて起きないと高をくくっていた。理由はソ連の力を過信していたのもあるし、ヒトラーとの密約もあったからだ。
 平身低頭ソ連との不可侵を頼み込むヒトラーを見て、優越感をくすぐられたレミリアは、うっかり信用してしまったのだ。


(やべええええ、あのヒトラーが俺に頭さげてるよ! うー、感動すなあ)


 1941年、西部戦線で勝利したドイツ軍は電撃的にソ連に侵攻した。レミリアはヒトラーが欠片も攻めてくるとは思っていなかったし、刺激してはまずいだろうと、国境付近の兵力を薄くしてしまっていた。


 初戦はソ連の大敗。対応に追われたレミリアは非情な命令を下した。


ソ連国防人民委員令第227号(一歩も下がるな!)を俺が出す羽目になるとは……みんなごめん)


 その後、フラングラード、レミリアングラード、パチューリングラード、ユゥーカリングラードなどで激しい攻防戦が起きた。
 とくにレミリアングラードの戦いは凄まじくワンブロック占拠するのに1個小隊が消滅することもあったという。


 包囲戦で防衛側最大の弱点とは何か? それは物資である。
 史実レニングラード、スターリングラードの死者数が膨大なのは餓死者のせいでもある。とくに一般人への被害が大きかった。


 レミリアもスターリングラード攻防戦の悲惨さは一応知っていた。共産趣味者の嗜みとして、大祖国戦争だけは大まかな知識があったからだ。
 もっとも油断によってまさに史実通りの展開になってしまったのは皮肉だったが……。


「フラン、私はレミリアングラードに行くわ」
「お姉さま!? どうかおやめください!」
「……飢えに苦しむ同志を、私の名を冠した都市を見捨てられないの。それにね。私には秘策がある!」


 そして、射命丸率いる空軍の護衛を受けたレミリアは上空から大量の物資の投下に成功した。


「我が策成れり!」


 信じられないほどの量の物資が空から次々と降下される光景は、味方を勇気づけ、敵を(おのの)かせた。レミリアングラードの奇跡と呼ばれ大祖国戦争の語り草となったという。


(ただ王の財宝(ゲート・オブ・バビロン)に詰め込めるだけ詰め込んだ物資を落としただけなんだけどね。うー、使えないなんて言ってごめんよ)


 それ以来、レミリアは、王の財宝を人民の財宝(ゲート・オブ・ソビエツキー・ソユーズ)と呼んで愛用している。
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