プロローグ
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「うう……ここ、どこぉ……」
霧が深くかかる森の中、年端もいかない小さな女の子が一人、涙を浮かべあてもなく彷徨う。
彼女自身どうしてこんなところにいるのか見当もつかず、自身に何が起きたのかすら理解できていない。
はじめはたった一つの疑問だった。自身が思ったそのわずかな疑問を同じクラスメイトへ問いかけたことから始まった。
しかし返ってきた答えは彼女の納得できるものではなかった。
他のクラスメイトに同じ問いを投げかけても、言葉が違うだけで同じようなことしか答えてくれない。
クラスメイトだけではなくほかの知り合いや両親、はては通りすがりの大人にも問いかけるも、皆が皆そろって同じ答えしか返ってこない。
自分がおかしくなったのか、そう思って調べてみるも本に載っている知識と自分の疑問に齟齬はみられない。
それらをクラスメイトに突き付けてみても、彼らは考えを変えない。それどころか『その本が間違っている』、ひどいものだと『お前は嘘つきだ!』と言って彼女を責め立てるものさえいた。
彼女は周囲の人間や自分自身さえ信じられなくなり、何日も寝込んだ。
寝て寝て寝て寝て起きて、また寝る。
起きれば何かが変わっているかもしれないとわずかに期待したものの、待っているのはいつもと変わらない平和な日常。
いや、私以外が変わらない日常。気づいてしまった私にはひどく不気味に見える、そんな日々。
消えてしまえばいいと思った、全部嘘だったらいいと思った。
そんな思いが、彼女をそこへいざなったのだと、思いもせずに。
しかし結果だけを見て語るのなら、この出来事は彼女にとってとても幸福であったといえるだろう。
「おお? こんなところに人間がいるなんて珍しいこともあるもんだ」
その声に驚き振り向けば、彼女自身よりも年上に見えるもののまだまだ幼さを残す少女がそこにいた。
「おねえちゃん、だれ?」
「私か? 私は霧雨魔理沙っていうんだ、そんなことよりここにいると怖い妖怪たちに食われちまうぜ」
そう名乗る少女、霧雨魔理沙との出会いから始まり、彼女はこれから何度もこの場所へ、幻想郷を訪れることとなる。
さらにはとある吸血鬼の助言により四人の師匠を得て、彼女たちから多くのことを学ぶこととなる。
それは彼女にとっての転機であり、かけがえのない大切な思い出であり、多くの友と騒ぎあうことのできる唯一の時間であった。
時は経ち、幼かった彼女が外の世界で中学二年生と呼ばれるようになった年の冬。
とある10才の新任教師の赴任とともに、物語は動き始めることとなる。
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