第百三十二話 残暑に入ってきてその十一
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「実際に」
「そうです、ですから娯楽と芸術はです」
「近いものといいますか」
「同じですか」
「そうしたものです」
「何かそう言われますと」
僕は裕子さんのその話を聞いて述べた。
「難しく考える必要はないんですね」
「はい、芸術は特別だのとです」
「私もそう思います」
早百合さんも演奏を終えて僕にこう話してくれた。
「芸術といって難しく複雑に考えることはないのです」
「高尚にもですね」
「特にです」
「そうですか」
「はい、楽しいものとしてです」
「娯楽ですか」
「そう考えていいです」
そうしたものだとだ、早百合さんも言った。
「楽しめばいいのです、それも真剣に」
「真剣にですか」
「そして他の人達から認めてもられば」
そうなればというのだ。
「尚よいとです」
「思えばいいですか」
「楽しくない、好きでないことをしましても」
それでもとだ、早百合さんは少し自分のことを思い出したのか一瞬楽しくないといった顔になってから元の顔になって僕に話してくれた。
「嫌になりますね」
「確かに」
「私の場合は武道ですが」
「武道されたことがあるんですか」
「はい、小学校の時に少し」
「そうだったんですね」
意外だった、ピアニストに早百合さんが武道をしていたことがあるなんて。それで僕は早百合さんに自分から聞いた。
「それでどんな武道を」
「はい、合気道でした」
「合気道ですか」
「ピアノは既にしていましたが」
それでもというのだ。
「護身にと父に言われまして」
「それで、ですか」
「最初に合気道の道場にお邪魔しましたが一日で入門せずに帰りました」
「一日で」
「手を痛めそうだと思ったので」
早百合さんはピアノの演奏を終えてすぐに手袋を嵌めていた、とにかく手のガードは忘れない人なのがここでも出ていた。
「ですから」
「それで、ですか」
「している間も怖くて」
ピアノを演奏する為の手を痛めるかどうかとだ。
「ですから」
「それで、ですか」
「武道はそれ以来です」
「しようとはですか」
「思いませんしするのなら」
「楽しいとは思いませんか」
「私にとっては」
そうだという返事だった。
「このことは変わらないと思います」
「そうですか」
「ですがピアノはです」
「そうしたことがなくて」
「厳しいレッスンの時もそうでした」
この辺りは先生による、よく剣道部の先生が言ってるけれどどんなに素晴らしいものでも教える人間の質が悪いとどうにもならないとだ。厳しいのならいいけれど所謂屑と言うべき輩に教わって得られるものはないとだ。
「楽しかったです」
「厳しくてもですか」
「いい先生でした」
「厳しくてもいい人っていますよね」
「それがわか
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