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魔弾の王と戦姫〜獅子と黒竜の輪廻曲〜
第21話『奪われた流星の丘アルサス〜忍び寄る魔王の時代』【Bパート 】
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う反撃を『あご』から受けて悶絶する。
敵兵に見向きもしない――乱れた髪を直すが如く、ただの生理動作。
まるで、後ろに目玉があるかのような、ごく自然な動作で敵兵を返り討ちにした。
?
「何故、お前がアルサスに居るんだ?」
?
唐突な凱の台詞。
それはこっちの台詞だ。とは言い返さないシーグフリード。
世間話のような感覚で告げる。
?
「俺の放った部下から『アルサスで燃える水が採取されている』という連絡が入ってな」
「……燃える水?」
「直接出向いていく予定だったが、何人かアルサスから亡命するヤツもいるとの情報も同時に来た。そいつらを保護して事情聴取するつもりで急いできたが……手遅れのようだった」
?
ルヴーシュでの出来事から数日間、帝国に属する戦士団と騎士団は独自に行動を開始した。
別の風様と化したブリューヌの内部事情を把握するため、銀の流星軍と同じくヴォージュ山脈付近に拠点を構えて活動を開始した。
ちょうどザイアン=テナルディエが銀の流星軍の斥候の任を受けていたころである。二つの情報が同時に入ってきたのは。
一つは、アルサスにフェリックス=アーロン=テナルディエが駐在していること。
二つは、木炭や石炭に成り代わる次世代の燃材料――『燃える水』がアルサスで採取されていることだ。
?
「まさか、その子の母親が抱えているのは……『燃える水』なのか!?」
?
ブリューヌ辺境の地でまず見られない特別な容器。かすかに漏れる、鼻孔を逆なでする不快なにおい。無色透明の液体は、凱のいた時代でも広く使われているあの『引火性液体』しかない。
今は港海でさえ凍り付く冬だ。静電作用が極端に働く季節で『点火』などすれば、草原の海原は文字通り火の海と化す。
おそらく――無辜の民たちは、それを知らないはずだ。燃える水の恐ろしさを。
いつ着火するかわからない爆弾を、その手に宿しながら。
驚愕する凱をよそに、銀髪の人物は母親の亡骸に目をくれる。
?
「そうか。燃える水を奪取して『亡命』を図ろうとしたのだろうな。その女はアニエス出身。一時とはいえ、『元』奴隷の自分たちなら、アルサスへ怪しまれずに忍び込めると思った。そいつを条件に安全な国へ亡命するために」
?
全ては――自分の娘を危険な国から遠ざけるために。
国家機密である燃える水を奪われた銀の逆星軍は、凱が打ちのめした兵を、この人たちに差し向けたのだろう。
?
これが、もしムオジネルやザクスタンのような好戦国に渡ったりでもしたら、海戦力は飛躍的に上昇する。
?
シーグフリードの推測を聞いた凱は、独立交易都市(ハウスマン)で起きた『魔剣』をめぐる争奪戦を思い出した。
独立交易都市国家(ハウスマン)のように、大陸上に存在するすべての国家は、理念さえ守れば誰しも受け入れを許可するわ
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