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魔弾の王と戦姫〜獅子と黒竜の輪廻曲〜
第21話『奪われた流星の丘アルサス〜忍び寄る魔王の時代』【Bパート 】
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「先に、この少女の母親を……弔おう」
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凱は少女の後ろに横たわる亡骸に目を向ける。
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「……そうね」
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力のない――フィーネの返事。
そしてもう一つの現状。
沈痛な表情を崩さないまま、ティッタは少女の母親の亡骸に目を向ける。
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(どうして……あたしは……こんなにも無力なんですか?)
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こうして、地に伏して倒れている、若しくは倒れていく民に対して何もできない自分。
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――――なぜ?
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これが天の仕業なら、天に怨嗟の声を叫ぶだろう。
これが地の所業なら、地に怒りをぶつけるだろう。
だが、今ブリューヌ全域で起きている惨劇は、明らかに人為的なものだ。
武力のない弱者は殺される。
知恵のない愚者は騙される。
それでも『なぜ』と思わざるを得ないティッタ。
例え過酷の中を生きようと、ただ弱いという理由だけで、本当に生きる資格はないのですか?――。
力弱くとも、その中で足掻きながら、懸命に『生きる資格』を掴もうとすること自体が、間違っているのですか?
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(……祈っては……ダメ)
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本来なら、巫女の家系出身たるティッタは手を合わせて神々に祈る……はずだった。
だが、それをしなかった。するべきではないからだ。
手を合わせれば、『母親』を弔う為に、土を掘り起こすことさえできなくなる。
悲しみを癒す為に、少女を抱きしめてあげることもできなくなる。
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「……」
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そして――凱も『母親』の表情に目をくれる。
ティッタとは違う自責の念が、凱自身に降りかかる。
力を持てし者と言えど、救える人間に限りがある。分かってはいたことだが、それを認めたくない自分がまだいる事にも、改めて気づかされた。
時折、シーグフリードの言葉の重さが、意識の中をかけめぐる。
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――貴様が幻想国家(オステローデ)で居眠りをこけた分だけ、事態はより一層加速したんだよ――
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代理契約戦争。
ディナントの戦い。
モルザイムの戦い。
ナヴァール騎士団との合戦。
オルメア会戦。
ビルクレーヌの戦い。
ナヴァール騎士団対銀の逆星軍との戦い。メレヴィル合戦。
銀の流星軍対銀の逆星軍との戦い。ディナント合戦。
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本当に、本当にたくさんの事があった。ありすぎた。それは、悲劇に満たされた時間の流れ。
死は誰にも平等に訪れる。故に凱の存在は摂理に反する。
宇宙の法則を乱す者――元凶なりし者。
かつて、機界原種の初襲来にて、原種たちに歯が立たず、護に弱音を吐いたあの言葉。
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――ただ自分が生き延びる為の……鋼の身体か!?俺は……何のために!――
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人を超越した力を持つ故に、その力の行く道筋が見えぬもどかしさ。何も救えぬ虚しさ。
あの時――巨腕原種、鉄髪原種、顎門原種の強さは、どうしようもな
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